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「お前には何も残さない!」財産を独占した兄→最終的に手にしたのは負債だけだった【短編小説】

父の葬儀…財産を独占する兄
「会社に貢献しなかったお前には、遺産は何も残さない!」
父の葬儀が終わり、遺産分割の話し合いになった途端、兄の雄大はそう言って、全ての財産を独占すると宣言しました。
父が一代で築き上げた会社も、実家の土地も、貯金も、すべて自分のものだと。
長男として父の会社を継ぐ兄と、家を出て司書として働く私。
兄は、昔から私を見下していました。
母は気圧され、私は兄と争う気力もなく、ただ、父との穏やかな思い出だけを胸に、相続放棄の書類に判を押したのです。
それから一年。兄が高級車を乗り回し、社長として羽振りの良い生活をしていると、風の噂で聞いていました。
私は、静かな暮らしの中で、父の形見である数枚の写真だけを大切にしていました。
突然の兄の電話、まさかの内容だった
そんなある日の夜、その兄から、血相を変えたような声で電話がかかってきたのです。
「静香、頼む!金を貸してくれ…!」
聞けば、父の会社は、表向きは順調に見えて、その裏では父が知人のために組んだ、多額の連帯保証債務を抱えていたというのです。
財産を全て相続した兄は、そのプラスの資産を、遥かに上回るマイナスの負債まで、一人で背負い込むことになっていました。
相続を放棄していた私は、一切の借金を負う必要はありません。
財産を独占しようとした強欲な兄。
そして、全てを諦めた私。
一年という時を経て、私たちの立場は、あまりにも皮肉な形で、完全に逆転していました。
『お前には何も残さない』。そう言った兄が、結果的に手にしたのは、プラスの財産ではなく、莫大な借金だけだったのですから。
私は、電話の向こうで必死に私にすがる兄に、静かにこう告げました。
「ごめんね、私には何もないから」
そう、兄が望んだ通りに。
私は、父の負債という「何もない」状態を手に入れ、兄は、全ての「負債」を手に入れたのです。
これ以上ない、スカッとする結末でした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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