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『資格は紙切れだ』と笑った上司。→転職先で部下として出会った日【短編小説】

『美咲さん、そんな資格なんて取っても、ただの紙切れだよ。現場の経験が全てなんだから』
かつての上司だった武田課長は、私の努力をせせら笑いながら、オフィス中に響く声でそう言いました。
当時の私は、今の仕事に限界を感じ、キャリアアップのために、働きながら専門資格の取得を目指していました。
寝る間を惜しんで勉強する私を、武田課長は「無駄なこと」と決めつけ、事あるごとに馬鹿にしたのです。その悔しさが、私の心に火をつけました。
資格を武器に転職活動へ
一年後、私はその「紙切れ」を武器に、その会社を退職。
幸運にも、急成長中のベンチャー企業に、マネージャーとして転職することができました。
そして、運命の日がやってきます。
私のチームで欠員が出たため、中途採用の面接官を務めていた時のことです。
最終面接の候補者リストに目を通していた私の指が、ある名前の上でぴたりと止まりました。
『武田 誠』
まさかと思いましたが、職務経歴書には、紛れもなく私が以前勤めていた会社の名前が。
どうやら、その後のリストラで会社を辞めることになったようでした。
面接に来たのはまさかの…
「どうぞ、お入りください」
平静を装い、ドアの向こうに声をかけます。
入ってきたのは、記憶にある姿そのままの武田さんでした。
彼は面接官である私に気づいた瞬間、自信に満ちていた顔を凍りつかせ言葉を失っています。
私はあくまで冷静に、淡々と面接を進めました。
彼はしどろもどろで、本来の実力を全く発揮できていないようでした。
面接の終わり際、私は彼の職務経歴書の資格欄が空白なのを確認し、最後に最高の笑顔でこう告げたのです。
「武田さん、素晴らしいご経験ですね。ちなみに弊社では、資格もきちんと評価の対象としておりますので、今後のご参考までに」
彼の顔が、みるみるうちに赤く染まっていくのが分かりました。
彼が「紙切れ」と笑った一枚の資格証。
それは、私を窮屈な世界から救い出し、新しいステージへと引き上げてくれた、何物にも代えがたい翼でした。
その日私たちの立場は、皮肉にも完全に逆転したのです。
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【編集部注】
本記事は、資格取得をテーマにした創作の小説であり、登場する人物や団体、出来事はすべて架空のものです。記事内で描かれている資格取得による転職やその後の展開は物語上の演出であり、同様の結果を保証するものではありません。
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