MENU

Share

予約したホテルに着いたら「存在しなかった」→絶望の夜、私を救ったのは…【短編小説】

予約したホテルに着いたら存在しなかった→絶望の夜私を救ったのは短編小説

念願だった一人旅。
日々の仕事の疲れを癒すため、私は海辺の小さな町を訪れました。
見知らぬ予約サイトで見つけた、趣のある小さなホテル。
そこに泊まるのを、ずっと楽しみにしていました。

長い電車に揺られ、町に着いた頃には、もう日が暮れかかっていました。
スマホの地図を頼りに、予約したホテルの住所へ。
しかし、そこに辿り着いた私を待っていたのは、信じられない光景でした。

どこにもなかった宿泊先

ホテルなど、どこにもない。
そこにあったのは、建物が取り壊された後のがらんとした空き地だけだったのです。

予約サイトは消え、電話も繋がらない。
詐欺でした。夏の観光シーズン真っただ中、他の宿はどこも満室で、都会へ戻る終電ももうありません。
見知らぬ土地に一人、途方に暮れた私は、スーツケースに座り込み、静かに涙を流しました。

困っていた私を助けてくれたのは…

絶望の淵にいた、その時です。

「お嬢さん、どうしたんだい?」

優しい声に顔を上げると、割烹着を着たおばあさんが、心配そうに私を覗き込んでいました。
空き地の隣で、温かい光を灯す小さな食堂のおかみさん、千代さんでした。

事情を話すと、千代さんは「まあ、なんてこと」と私を店の中へ招き入れてくれました。
店主の健一さんは、黙って温かいお茶を出してくれます。
ご夫婦は、私のために知り合いの宿に電話をかけてくれましたが、やはり空きはありません。

いよいよ追いつめられた私を見て、千代さんは言いました。

「うちで良かったら、泊まっていきなさい。使ってない部屋があるから」

見ず知らずの私に向けられた、信じられないほどの優しさ。
私は、その言葉に甘えることにしました。

その夜、私はご夫婦の家の二階で、ふかふかの布団に包まれていました。
健一さんが作ってくれた、人生で一番美味しいおにぎりをいただき、千代さんが沸かしてくれた温かいお風呂にも入って。

人生で最悪の一日になるはずだった夜は、ご夫婦の善意によって、忘れられない温かい思い出に変わりました。
予約したホテルは存在しなかったけれど、私はそれ以上に、人の心の温かさという、かけがえのないものに触れることができたのです。

私を絶望の夜から救ってくれたのは、小さな食堂を営む、健一さんと千代さんの、見返りを求めない優しさでした。

 

▼こちらの記事もおすすめ
グアム旅行者必見!旅行会社のおすすめの選び方

 

【編集部注】

本記事は、旅行におけるトラブルをテーマにした創作の小説であり、登場する人物や出来事はすべて架空のものです。記事内で描かれているトラブルへの対処法は物語上の演出であり、同様の対応を推奨するものではありません。

Gallery

SHARE !

この記事をシェアする

Follow us !

GLAM公式SNSをフォローする

Feature

おすすめ記事

Ranking