Share
美容クリニックで50万の“闇契約”。友だち紹介割の罠を72時間で白紙撤回した方法[短編小説]
「このクリニック、すごくいいよ！今なら友だち紹介割で、ナオも私も5万円引きになるんだって！カウンセリングは無料だし、行ってみない？」
最近、急に綺麗になった友人のミキからの、悪魔のような囁き。長年、肌のくすみに悩んでいた私は、「無料なら…」「5万円引きは大きいな…」と、その甘い誘いに乗ってしまいました。
まさか、それが後悔とパニックに満ちた72時間の始まりになるとも知らずに。
無料カウンセリングの罠と、断れない空気
クリニックに足を踏み入れると、ホテルのラウンジのような豪華な内装と、丁寧すぎるスタッフの対応に、私はすっかり舞い上がっていました。個室に通され、始まったカウンセリング。優しい笑顔のカウンセラーは、私の悩みを巧みに引き出し、いつの間にか「治療しなければ大変なことになる」というレベルまで不安を煽っていきます。
そして提示された見積もりは、80万円。
「無理です、そんな金額…」と断る私に、ここからが彼らの本領発揮でした。
「ですが本日限定のキャンペーンがありまして…」
「ミキ様からのご紹介ですので、さらに5万円お引きします」
「本日この場でご契約いただけるなら、上司に掛け合い、特別に50万円までお値下げします！」
矢継ぎ早に繰り出される”限定割引”の嵐。「少し考えさせてください」と言っても、「この割引は今日契約しないと適用できないんです！」と帰らせてくれない。気づけば、私は完全に断れない空気に飲み込まれていました。
「月々1万円程度のお支払いですから、負担は少ないですよ」
その一言が決め手となり、私はまるで何かに憑かれたように、50万円の医療ローン契約書にサインをしてしまったのです。
契約後の絶望と、一筋の光
クリニックを出た瞬間、高揚感は消え失せ、ずっしりとした契約書の重みと共に、猛烈な後悔が私を襲いました。月々1万でも、総額は50万円。冷静に考えれば、今の私に払えるわけがない。どうしよう、どうしよう…。
半泣き状態で家に帰り、私は震える手でスマホを掴み、一心不乱に検索を始めました。
「美容クリニック 高額契約 解約」
「契約してしまった クーリングオフ」
すると、そこに一筋の光が見えたのです。それは「クーリング・オフ制度」という言葉でした。
法律で定められた特定の契約は、一定期間内であれば無条件で解除できるという制度。私がサインしたエステティックサービスの契約も、その対象だったのです。期間は、契約書面を受け取った日から8日間。もう迷っている時間はありませんでした。
72時間で決着を。私の逆転プラン
クーリング・オフの意思表示は、電話では証拠が残らず不十分。法的に効力を持つ「内容証明郵便」で通知を送るのが最も確実だと知りました。
私はすぐに、契約解除通知書を作成しました。契約年月日、コース名、金額、そして「上記契約をクーリング・オフ制度に基づき解除します」という明確な意思表示。これを3部（クリニック送付用・自分の保管用・郵便局保管用）用意しました。
翌朝、私は郵便局へ走り、内容証明郵便でクリニック宛に通知書を発送。同時に、契約した信販会社（ローン会社）にも、同じく契約を解除する旨を通知しました。これが非常に重要です。クリニックだけでなく、ローン契約も止めなければ意味がありません。
契約から、わずか48時間後のことでした。
勝利の電話と、取り戻した平穏
内容証明郵便がクリニックに届いたであろう、2日後の午後。私のスマホに、クリニックから電話がかかってきました。声のトーンは明らかに不機嫌でしたが、「クーリング・オフの通知書、拝見しました。契約解除の手続きを進めます」とのこと。
「…はい、よろしくお願いします」
電話を切った瞬間、全身から力が抜け、その場にへたり込みそうになりました。勝ったんだ。あの50万円の”闇契約”から、私は逃げ切ることができた。
後日、友人ミキにも正直に全てを話しました。彼女は自分の紹介がきっかけになったことをひどく謝ってくれましたが、私は彼女を責めるつもりはありません。悪いのは、友人の善意を巧みに利用し、高額な契約を迫るクリニックのやり方です。
「無料カウンセリング」や「友だち紹介割」は、一見すると非常にお得に感じられます。
しかし、それは時として、断れない状況を作り出すための巧妙な罠になるのです。もし同じような状況に陥ってしまっても、決して諦めないでください。法律は、冷静に行動する消費者の味方になってくれるはずです。
Gallery
SHARE !
この記事をシェアする
Follow us !
GLAM公式SNSをフォローする
Recommends
関連記事
Feature
おすすめ記事
