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「このクーポン、昨日までだけど使わせてよ」と粘る客。だが、店員の指摘をうけ、黙り込んだワケ【短編小説】

「このクーポン、昨日までだけど使わせてよ」と粘る客。だが、店員の指摘をうけ、黙り込んだワケ【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

期限切れクーポンをだす客

私は駅構内にある忙しいカフェチェーンでアルバイトをしています。

場所柄、平日のランチタイムともなれば、サラリーマンやOLの方々で店内は戦場のような慌ただしさになります。

その日も、レジの前には長蛇の列ができていました。

私はドリンクを作る担当とレジ打ちを兼任していて、まさに目の回る忙しさ。

「お待たせいたしました!次のお客様どうぞ!」

声を張り上げてお迎えしたのは、スーツ姿の50代くらいの男性でした。

男性は少しイライラした様子で、注文と一緒に一枚のクーポン券をカウンターに置きました。

「これ、使って」

それは、当店で季節ごとに配布しているドリンクの無料サイズアップ券でした。

私は笑顔で受け取り、いつものように有効期限の日付を確認しました。

「あ……」

思わず声が漏れてしまいました。

クーポンの日付は「〇月〇日」。

なんと、昨日の日付で期限が切れていたのです。

「申し訳ございません、お客様。こちらのクーポンですが、有効期限が昨日までとなっておりまして……」

私が恐縮しながらお返ししようとすると、男性はあからさまに不機嫌な顔をして声を荒らげました。

「はあ? 昨日までって、たった1日過ぎただけだろ?」

「はい、おっしゃる通りなのですが、期限切れのものはレジのシステム上、どうしてもお使いいただけない決まりになっておりまして」

「そんなの、店員のさじ加減でどうにでもなるだろ! 融通がきかないな」

男性の声が大きくなり、店内の空気がピリつきます。

後ろに並んでいるお客様たちも、「なんだなんだ」と白い目でこちらを見ています。

早く列をさばかなければいけないのに、どうしよう……。

私の額には冷や汗が滲んでいました。

「1日くらいおまけしろよ。こっちは常連なんだぞ。マニュアル通りの対応しかできないのか?」

男性は一歩も引かず、カウンターを指でトントンと叩き始めました。

私は困り果ててしまい、店長を呼ぼうかと迷いました。

クーポンの違和感

しかし、念のためもう一度クーポンを確認しようと手元に目を落としたとき、ある違和感に気づいたのです。

日付の数字は、確かに昨日のものでした。

でも、その横に小さく印字されている「西暦」が……。

私は一度深呼吸をして、できるだけ冷静に、そしてニッコリと微笑んで言いました。

「お客様、大変失礼いたしました。私の確認不足でございました」

「おう、わかればいいんだよ。使えるんだろ?」

男性は勝ち誇ったように鼻を鳴らします。

「いえ、そうではなくてですね……。こちらのクーポン、昨日までというのは間違いないのですが、よく拝見しますと『去年』の昨日までになっております」

「……へ?」

男性の動きがピタリと止まりました。

「えーと、今年は2026年ですが、こちらのクーポンには2025年と記載されておりまして……。ですので、1日過ぎたのではなく、正確には『1年と1日』過ぎてしまっているようでして……」

その瞬間、あたりに静寂が訪れました。

男性は慌ててクーポンをひったくるように手に取り、顔を真っ赤にして数字を確認しています。

どうやら、財布の奥底に眠っていた古いクーポンを、最近もらったものと勘違いして出してしまったようです。

「あ、ああ……そうか、こっちか……いや、その……」

さっきまでの威勢の良さはどこへやら。

男性は見るからに小さくなり、蚊の鳴くような声で「じゃあ、定価でいいです」と言って、お財布から小銭を取り出しました。

逃げるように会計を済ませ、ドリンクを受け取ると、そそくさと店に奥へと消えていきました。

後ろに並んでいたお客様からは、こらえきれないクスクス笑いが聞こえてきます。

どんなに粘っても、さすがに1年前のクーポンは「誤差」では済みませんよね。

私は心の中で「お疲れ様でした」とつぶやき、次のお客様を笑顔でお迎えしたのでした。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

PROFILE

GLAM Lifestyle Editorial

編集部

日々の暮らしや選択を通して生まれる気持ちの変化に目を向け、人生を自分らしく整えていくヒントを届ける編集部チームです。仕事や人間関係、暮らしの質、価値観の揺らぎ。さまざまなテーマを横断しながら、今の自分にとって心地よい選択とは何かを考え、無理のない距離感で情報を発信しています。ときには短編小説の力も借りながら、日常にそっと寄り添い、気持ちを軽くするようなライフスタイルコンテンツをお届けします。

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