Share
「宝くじ当たっただろ?分けて」無心にくる友人たち。実は当たったのは商店街の福引と分かると【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
鳴り止まない通知
スマホの通知音が、これほど恐ろしく聞こえたことはありません。
「久しぶり!元気?」
「今度ご飯行こうよ、奢りで(笑)」
「実は借金があってさ……」
「宝くじ当たっただろ?分けてくれ!」
普段は連絡なんてよこさない学生時代の同級生や、顔もよく覚えていない知人からのメッセージが、ひっきりなしに届くのです。
ことの発端は、私がSNSに投稿した「まさかの1等当選!今年の運、全部使い果たしたかも!」という、たった一言のつぶやきでした。
どうやらこの言葉が、一人歩きしてしまったようなのです。
「あの子、宝くじで1等当たったらしいよ」という尾ひれがついて。
ある日、特にしつこかった友人グループ数人に呼び出されました。
「お祝いの会」と称されていますが、彼らの目の奥が「¥」マークになっているのが痛いほどわかります。
高級焼肉店で、頼んでもいない特上カルビを次々と注文する友人たち。
「で、いくら入ったの?」
「マンション買うの?」
「俺たちにも少しくらい還元あるよな?」と、詰め寄ってきます。
事実を伝えると
私はお肉が焼ける香ばしい匂いの中で、申し訳なさと呆れが入り混じった気持ちで口を開きました。
「あのね、みんな何か勘違いしてるみたいだけど……」
「隠すなよ~、水臭いなあ!」
「違うの。私が当てたのって、これだよ?」
私はバッグから、ラミネート加工された一枚の紙を取り出しました。そこには、赤と白の派手な文字でこう書かれています。
『祝・1等! 商店街歳末大感謝祭 高級黒毛和牛ギフトセット(1万円相当)』
一瞬、その場が静まり返りました。ジュウジュウと肉が焼ける音だけが響きます。
「……え? 宝くじじゃないの?」
「うん。駅前の商店街のガラガラで出た、赤玉だよ」
友人たちの顔から、サーッと血の気が引いていくのが見えました。
数億円だと思っていた「財源」が、まさかの「お肉セット」だったのですから。
「あ、急用思い出した」
「私も……」
さっきまでの勢いはどこへやら。彼らはそそくさと割り勘分の代金だけを置いて、蜘蛛の子を散らすように帰っていきました。
残されたのは、私と、網の上で焦げ始めた特上カルビだけ。
「まあ、いっか。お肉は美味しいし」
私は一人、美味しいお肉を堪能しました。
お金の切れ目が縁の切れ目とは言いますが、勘違いで寄ってきた縁なんて、切れて正解だったのかもしれません。
これからはSNSの投稿には気をつけようと、心に誓った夜でした。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
Feature
特集記事

