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「洗濯物、派手ですね」その一言から始まった監視の毎日。笑顔の裏にあるマウント隣人の違和感【長編小説】

洗濯物派手ですねその一言から始まった監視の毎日笑顔の裏にあったマウント隣人の真意長編小説

引越し先で出会った隣人

私は望月彩香(もちづきあやか)、30歳の会社員です。
これは、私が新しいマンションに引っ越した先で体験した、背筋が凍るようなお話です。

都心での一人暮らしにも慣れ、もう少し広い部屋を求めて引っ越した先は、セキュリティもしっかりした、きれいな分譲賃貸マンションでした。
新しい生活に胸をときめかせていた私。荷解きも一段落した週末、挨拶回りをしました。

お隣の部屋のインターホンを押すと、「はーい」という明るい声と共に、私と年の頃も近そうな、柔らかな雰囲気の女性が出てきました。

「はじめまして。隣に越してきました、望月です。どうぞよろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。高橋玲奈(たかはしれいな)です。こちらこそ、よろしくお願いしますね。わからないことがあったら、何でも聞いてください」

にこやかで、とても感じの良い玲奈さん。
良い人が隣でよかった、と心から安堵したのを覚えています。

その「事件」が起こったのは、引っ越して1週間ほど経った、よく晴れた日のことでした。

私はベランダで洗濯物を干していました。
私は明るい色の服が好きで、その日も赤や黄色のカーディガン、柄物のワンピースなどが並んでいました。 ふと、隣のベランダから視線を感じました。

視線の正体

玲奈さんです。

「こんにちは、望月さん。お天気いいですね」 「こんにちは! 本当に、洗濯日和ですね」

そう返した私に、玲奈さんはにっこり笑ったまま、言いました。

「……洗濯物、派手ですね」

え? 一瞬、言葉の意味が分かりませんでした。
「あ、はあ。私、明るい色が好きで……」 「そうなんですね。うちは主人がそういうのをあまり好まないので、ベージュとかグレーばかりで。ちょっと羨ましいです」

そう言って玲奈さんは笑って部屋に戻っていきました。
私は「羨ましい」という言葉とは裏腹に、どこかチクリと棘(とげ)のある言い方に、胸がざわつくのを感じました。

その日から、私の「監視」の毎日は始まったのです。

最初は、偶然を装っていました。
朝、ゴミを出しに行くと、必ずと言っていいほどエレベーターホールで玲奈さんと一緒になります。
「彩香さん、おはようございます。今日は出勤、早いんですね」

夜、コンビニに寄って帰ってくると、エントランスでばったり。 「おかえりなさい。そのコンビニのスイーツ、美味しいですよね。私も昨日食べました」

最初は「すごい偶然ですね!」なんて笑っていた私ですが、それが週に4回、5回と続くと、さすがに「偶然」とは思えなくなりました。
玲奈さんは、まるで私の行動パターンをすべて把握しているかのようでした。

そして、会話の端々に「マウント」が挟まれるようになりました。

「彩香さん、そのバッグ、新しいものですか? 素敵。私はもう、ブランド物しか持たせてもらえなくて。重いし飽きちゃうんですけどね」

「週末、ご友人がいらしてたみたいですね。うちは主人の付き合いで、毎週末ホテルのラウンジばっかり。たまには家でゆっくりしたいなあ」

彼女の笑顔は完璧でした。
でも、その笑顔の裏で、「あなたより私の方が、夫に愛されていて、裕福で、充実している」というメッセージが透けて見えるようでした。

「派手な洗濯物」の私は、「独身で、自由気まま(=みすぼらしい)」というレッテルを貼られているようでした。

隣人と会うのが苦痛でした

私はだんだん、玲奈さんと会うのが苦痛になってきました。
できるだけ物音を立てないように暮らし、ベランダに出る時は、隣の気配を入念に確認するようになりました。

そして、決定的な出来事が起こります。

その日は仕事でミスをしてしまい、かなり落ち込んで帰宅しました。
自炊する気力もなく、買ってきたお弁当をぼんやりと食べ、電気もつけたままリビングでうたた寝をしてしまったのです。

はっと目を覚ますと、深夜の2時でした。 慌てて電気を消してベッドに入った、その翌朝。

ゴミ捨て場で、待っていたかのように玲奈さんが立っていました。
「こんばんは、彩香さん」
「……こんばんは」
「昨日、何かありました? 夜中の2時までリビングの電気、ついてましたよ。悩み事なら、私、聞きますよ?」

なぜリビングの明かりに気づいたの?

全身の血の気が引きました。

私の部屋のリビングは、共用廊下からは見えません。
ベランダ側からしか見えないのです。 それも、わざわざ乗り出して覗き込まないと、室内の電気の様子まではわからないはず。

彼女は、深夜2時に。 わざわざベランダに出て、私の部屋を「監視」していたのです。

「悩み事?」 彼女は、心配するどころか、どこか嬉しそうに見えました。
私の「不幸」や「乱れ」を、心の底から楽しんでいる。
彼女にとって、私は格好の「観察対象」であり、「優越感に浸るための道具」だったのです。

「……いえ、別に。失礼します」 私はそれだけ言うと、逃げるようにその場を立ち去りました。

あの日以来、私は玲奈さんとは一切、目を合わせていません。
すぐに遮光性の高い、分厚いカーテンに買い替え、ベランダに出ることもやめました。
洗濯物はすべて部屋干しです。

彼女は今も、あの完璧な笑顔の裏で、私の部屋を監視しているのでしょうか。
もしかしたら、次の「獲物」を見つけているのかもしれません。

引っ越しは、時にこういう「リスク」も伴うのだと痛感しました。
私は今、次の引っ越し先を探すために、必死で貯金をしている毎日です。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

 

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