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隣人に「子どもの声がうるさい!」と怒鳴り込まれた私。→数年後、逆に助けを求めてきた【短編小説】

騒音トラブルに悩む毎日
息子がまだ、やんちゃ盛りの三歳だった頃のことです。
当時住んでいたアパートの階下には、高橋さんという、一人暮らしの年配の女性が住んでいました。
音にとても敏感な方で、私はいつも、息子の翔太に「静かにしなさい」と、口を酸っぱくして言い聞かせていました。
しかし、ある日ついに事件は起こります。
翔太がテレビを見て大声で笑った、ただそれだけのことでした。
しかし、その直後、玄関のドアを壊さんばかりの勢いで叩かれ、ドアを開けると、鬼の形相の高橋さんが立っていたのです。
『いい加減にしてください!毎日毎日、あんたのところの子どもの声がうるさくて、頭がおかしくなりそうだわ!』
その剣幕に、私はただ、震えながら謝ることしかできませんでした。
ボランティア活動で訪れた先にいたのは
それから数年後。
私たちは、念願の一戸建てに引っ越しました。
あの日の恐怖から解放され、翔太も、のびのびと元気に育っています。
そんな私が最近、地域のボランティア活動を始めました。
高齢者の方のお宅を訪問し、買い物や話し相手になるというものです。
そして先日、新しく担当することになったお宅の住所を見て、私は息を呑みました。
高橋さんの、あのアパートだったのです。
おそるおそるチャイムを鳴らすと、出てきた彼女は、杖をつき、すっかり足腰が弱っていました。
私のことには、気づいていないようです。
「いつも一人で、話し相手もいなくてねえ…。一日中、物音ひとつしないんですよ」
寂しそうにそう言って、お茶をすする高橋さん。
かつて、あれほど子どもの声を「うるさい」と怒鳴り散らした彼女が、今、耐え難いほどの静寂の中で、孤独に苦しんでいました。
そして、その静寂を破るために、私に助けを求めてきたのです。
私は、最後まで、自分が「上の階に住んでいた、うるさい子供の母親」だとは名乗りませんでした。
ただ、彼女の話に、一時間、じっと耳を傾けました。
あれほど憎んだはずの彼女。
でも、目の前にいるのは、ただ、誰かとの繋がりを求める、一人の寂しいおばあさんでした。
皮肉な運命の巡り合わせに、私は、静かに胸の中で手を合わせたのでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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