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「昇進は俺が先に決まってる」同僚の自信満々発言→結果発表で撃沈したワケ【短編小説】

課長候補の同期と私
私の名前は菜摘。
私の所属する部署では、一ヶ月ほど前から、新しい課長が誰になるのかという話題で持ちきりでした。
候補は、実質二人。
同期入社の浩司と、私です。
浩司は、自分の成果をアピールするのが上手く、上司へのゴマすりも得意な、いわゆる「社内政治」に長けたタイプ。
一方の私は、目立つことは苦手でしたが、チーム全体のサポートや、後輩の育成に力を注いできました。
発表の一週間前。
浩司は、飲み会の席で、自信満々に言い放ちました。
『まあ、次の課長は、もう俺で決まってるようなもんだけどな。部長も、俺の実績は高く評価してくれてるし』
その傲慢な態度に腹が立ちましたが、私は何も言わず、ただ静かに、正式な発表を待つことにしました。
そして、運命の結果発表の日。
木村部長が、部署の全員を会議室に集めました。
浩司は、まるで主役のように、ふんぞり返って座っています。
「来月からの、新しい課長人事を発表する」
緊張が走る中、部長は、ゆっくりと口を開きました。
「新しい課長は…菜摘くんだ」
「え…」という、浩司の呆然とした声が、静かな会議室に響きました。
信じられないという顔で、彼は部長と私を交互に見つめています。
部長はそんな彼をまっすぐに見据え、言葉を続けました。
『浩司くんの、個人の営業成績が素晴らしいのは、私も認めている。だが、リーダーに必要なのは、自分の手柄だけではない』
そして、私の方へ向き直ります。
『菜摘くんは、常にチーム全体を見て、地道な業務改善や後輩の指導に尽力してくれた。その結果、部署全体の士気と生産性が、大きく向上した。私が評価したのは、そのリーダーシップだ』
浩司の自信に満ちていた顔が、みるみるうちに赤く染まっていくのが分かりました。
彼が撃沈したワケ。
それは、本当の意味での「リーダーシップ」を、彼自身が見誤っていたからでした。
自分の成果をアピールすることに必死で、周りを見る余裕がなかったのです。
部長は、私たちの表面的な実績だけでなく、その裏にある、日々の行動まで、きちんと見てくれていました。
派手な自己PRより、誠実な仕事ぶりが評価された瞬間。これ以上ない、スカッとする逆転劇でした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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