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「快適さが一番」と豪語したセレブ気取りの奥様→その快適すぎた暮らしが招いた、情けない結末【短編小説】

快適さが一番と豪語したセレブ気取りの奥様→その快適すぎた暮らしが招いた情けない結末短編小説

やっかいなお隣さん

私の名前は沙織。
夫の健太と、この静かな住宅街に越してきて、一年が経ちます。
我が家のささやかな悩みは、お隣に住む高木さんの存在でした。

何かにつけて、自分の暮らしがいかに裕福かを自慢しては、我が家の質素な暮らしぶりを、遠回しに見下してくるのです。

去年の夏の、うだるように暑い日のことでした。
夕涼みのため、窓を開けて扇風機を回していた私に、高木さんはベランダから声をかけてきました。

『あら、沙織さん。エアコンもつけないの?そんなに電気代を節約しないと、大変?うちは24時間つけっぱなしですわよ。快適さが一番ですもの』

彼女の言葉には、「うちは、あなたたちと違ってお金に余裕があるのよ」という棘が、はっきりと含まれていました。

真夜中に響くサイレンの音

それから数か月後の、冬の夜のことです。
突然、外から聞こえるけたたましいサイレンの音に、夫と顔を見合わせました。
窓の外を見ると、赤色灯が我が家の壁を照らしています。
慌てて外へ飛び出すと、お隣の、高木さんの家の前に、一台の消防車が停まっていました。

幸い、火はすぐに消し止められたようで、大事には至らなかった様子。
ご近所の方の話を総合すると、原因は、やはり電力の使いすぎ。
いくつもの暖房器具を同時に使用したことで、コンセント周りが異常発熱し、煙が出たというのです。
いわゆる「ボヤ騒ぎ」でした。

その後、高木さんは、消防車が来た騒ぎについて、一軒一軒、謝罪して回っていました。
我が家の前に来た彼女は、バツが悪そうに俯いたまま、消え入りそうな声で頭を下げます。

電気代を「節約している」と笑われた私たち。
電気を湯水のように使い、「快適さが一番」と豪語した高木さん。

快適さを追い求めた結果、火事一歩手前の騒ぎを起こした彼女の姿は、あまりにも皮肉なものでした。
一番明るく、快適そうに見えた家が、街一番のトラブルの原因になってしまったのですから。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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