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彼『元カノとは切った』→深夜、彼のスマホの未送信フォルダに、まだ消せない想いがあった【短編小説】

付き合い始めた頃から、彼には長く付き合っていた元カノがいると聞いていました。
「でも、もう元カノとは完全に切ったから」と真っ直ぐな目で言われ、その瞬間の彼の表情を信じることにしました。
私たちは互いの生活に慣れ、休日は一緒に映画を観たり、料理を作ったりと、穏やかな日々を過ごしていました。
小さな違和感
ある夜、彼がシャワーを浴びている間、テーブルの上に置かれたスマホが光りました。
画面に浮かんだのは、差出人不明の「未送信メッセージがあります」という通知。
普段なら気に留めないはずなのに、その時だけ胸がざわめきました。
あの“切った”という言葉が、ふと脳裏に蘇りました。
見てしまった真実
彼が眠った深夜、私は迷いながらもスマホを手に取りました。
未送信フォルダを開くと、そこには元カノの名前。
そして中には送信されなかった長文が保存されていました。
『久しぶりに会いたい』
『この前の場所を覚えてる?』
『あの頃に戻れたらいいのに』…
その一文一文が、心臓を締め付けました。送られてはいなくても、彼の気持ちはそこに生きていました。
それは、もう言い逃れできない証拠でした。
向き合った夜
翌朝、私はスマホをテーブルに置き、彼に向かって言いました。
「これ、説明してくれる?」
彼は最初、驚いたように目を見開きましたが、やがて視線を落とし、何も言わなくなりました。
その沈黙が、私が知りたかった全ての答えでした。
どれだけ問い詰めても、彼の言葉はもう信じられないと悟りました。
終わりの瞬間
「切ったって言ったのは、嘘だったんだね」
静かに荷物をまとめ、玄関に立った私に、彼は一言もかけませんでした。
夜明け前の空気は鋭く冷たく、頬を刺すその感覚が、胸の奥に残っていた迷いを凍りつかせました。
あの未送信メッセージは、私たちの関係の終わりを告げる静かな鐘の音。
そして、その音は、これから先も忘れることはないでしょう。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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