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無口な母から届いたデパコス。→箱に貼られた『一枚の付箋』に、涙腺が崩壊した【短編小説】

「元気?」
母から届くLINEはいつもたった一言。
返事をしてもスタンプ一つで終わってしまう。私が何か話しかけても「うん」「そう」と相槌を打つだけで、どこか壁を感じていた。
そんな母から、先日、大きな段ボールが届いた。中には、私がずっと欲しかった憧れのデパコス(デパートコスメ)が、一つ一つ丁寧に梱包されて入っていた。
驚きと喜びでいっぱいになりながら、私は母に電話をかけた。
しかし、電話口の母は「喜んでくれたみたいでよかったわ」と一言だけ。
私が「ありがとう」を伝えても、いつものように会話はすぐに途切れた。
憧れの化粧品と、母の愛
届いた化粧品を一つずつ手に取っていると、箱の裏に一枚の小さな付箋が貼られているのを見つけた。
そこには、母の少し下手な字で、こう書かれていたのだ。
「お肌、荒れてない?」。
私は、その言葉を見た瞬間、涙が止まらなくなった。
母は私が遠く離れて暮らしている間も、私のことをずっと気にかけてくれていたのだ。
私が悩んでいた肌荒れ。昔から無口な母だったから、私のコンプレックスを相談したことなど一度もなかった。
それでも、母は私が悩んでいることを、きっとどこかで感じ取っていたのだろう。
母が教えてくれた、本当の優しさ
私は母に、もう一度電話をかけた。
「お母さん、ありがとう。ずっと悩んでいた肌荒れのこと、どうして分かったの?」
すると母は、少し照れたようにこう言った。
「お友達が送ってくれたSNSの写真に、あんたが映ってたのを見ただけよ。…でも、あんたの顔、少し疲れてるみたいだったから。」
私は、嗚咽を漏らして泣き崩れた。
言葉では何も伝えてくれなかったけれど、母はいつも私のことを見ていてくれた。
そして、言葉にならない愛情を、こうして形にして伝えてくれたのだ。
本当の優しさは、言葉だけじゃない。そのことに気づいた私は、母に「お母さん、会いたいよ」と、初めて素直な気持ちを伝えることができた。
母は、いつもより少しだけ長い沈黙の後、「…また、会えるわよ」と、優しく言ってくれた。
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本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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