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祖母のガラケーに残された、亡き祖父への“天国へのラブレター”。その内容に、涙が止まらない【短編小説】

祖母のガラケーに残された亡き祖父への天国へのラブレターその内容に涙が止まらない短編小説

祖母の遺品から見つかったガラケー

先日、祖母の静が、眠るようにして旅立ちました。
親戚一同で集まり、祖母の遺品整理をしていた時のことです。

高校生のいとこ、翔太が引き出しの奥から見つけ出したのは、一台の古びたガラケーでした。
スマホしか知らない彼にとって、それは物珍しい骨董品のようだったのでしょう。
パカっと携帯を開くと、彼は無邪気に笑いました。

「うわ、懐かしい!ガラケーってまだあるんだw」

しんみりとした空気が流れていた部屋で、その言葉は少しだけ、場違いに響きました。
母が少し悲しそうな顔をしたのを、私は見逃しませんでした。

私が「おばあちゃん、スマホは難しいからって、ずっとこれを大事にしてたんだよ」と翔太から携帯を受け取ると、幸いにも充電器がすぐに見つかりました。
電源を入れると、懐かしい起動音と共に、小さな画面に光が灯ります。

ガラケーから見つかった1件のメール

写真フォルダには、庭に咲いた花の、少しだけブレた写真が数枚。
電話帳には、私たち家族の名前だけ。祖母の小さな世界が、そこにはありました。

そして、私はメールのフォルダを開きました。
受信箱はほとんど空。しかし、送信フォルダの中に、一件だけ「保護」されたメールが残っていたのです。宛先は、5年前に亡くなった祖父、健一の古いアドレス。
それは、送信されることのなかった、下書きのメールでした。

『健一さんへ

今日も一日、無事に終わりました。あなたがいないと、夜はやっぱり少し、寂しいですね。
庭の紫陽花が、今年はとても綺麗に咲きましたよ。あなたにも見せてあげたかった。
この前、翔太が顔を見せに来てくれました。すっかり大きくなって。あなたの好きだった野球を、今でも続けているそうです。
また明日、手紙を書きますね。

静より』

私が震える声でそれを読み上げると、部屋は水を打ったように静まり返りました。
ふと顔を上げると、母も、叔父も、そして携帯を笑った翔太も、みんな静かに涙を流していました。

この携帯は、ただの古い電話ではありませんでした。
祖母が、天国の祖父へ送り続けた、決して届くことのないラブレターだったのです。

物の価値は、新しさや機能だけでは測れない。
時代遅れのガラケーに詰まっていたのは、誰かを深く、静かに想い続ける、何よりも尊い心でした。
その日、私たちは、祖母が遺した一番の宝物を見つけたのです。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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