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タクシーで「すみません…降ろしてください」と言いたくなった瞬間。クセが強い運転手の行動…【短編小説】

タクシーですみません降ろしてくださいと言いたくなった瞬間クセが強い運転手の行動短編小説

終電を逃した金曜の夜

飲み会が長引き、気づけば電車はもうありません。
疲れ果てていた私は、大通りに出てようやく一台のタクシーをつかまえました。

「〇〇までお願いします」

「はいよ」
白髪混じりの年配の運転手さんが、落ち着いた声で返してくれました。
車内は静かでラジオもついておらず、私はほっとしながら座席にもたれました。

しばらくは走行音だけが響いていました。

そのとき、小さな声が聞こえました。

「…だから、それは違うんだよ」

独り言なのかなと思い、気にしないようにしていました。
しかし、すぐにまた声がします。

「いや、それは無理だって言ってるだろ」

会話のような口調です。
電話かと思って耳元を見ましたが、イヤホンはありません。

(独り言が激しい人なのかな…)

そう思いながらも、だんだん気になってしまいました。

 続く怒鳴り声

次の瞬間でした。

「聞こえないって言ってんだろ!!」

突然の怒鳴り声に、体がびくっと跳ねました。
怒鳴られたわけではないと分かっていても、この距離で大声を出されるとかなり驚きます。

運転手さんは前を向いたまま、何かに苛立っている様子でした。
私はすっかり緊張してしまい、呼吸まで浅くなっていたと思います。

(なにかトラブルなのかな…怖い…)

その後も運転手さんは、誰かに状況を説明するような調子で短く言葉を発していました。
私には相手の声がまったく聞こえず、ただ“片側だけの会話”が続く状態です。

私はあまりの恐怖に「すみません…降ろしてください」と言おうとした瞬間。

ちょうど自宅前に到着し、「着きましたよ」と穏やかな声に戻って運転手さんが言いました。
私は料金を支払い、外に出ると深く息をつきました。
怖かったというより、緊張しっぱなしだったという方が近い感覚でした。

そのときです。

タクシーの中から、ピッ、ザザッ… と雑音混じりの音が聞こえてきました。

振り返ると、運転席横の無線機が点灯しており、断続的に何かを受信していました。
相手の声は雑音でほとんど分からず、途切れたりかすれたりしている状態です。

(…あ、無線だったんだ)

そこでようやく状況を理解しました。

運転手さんの独り言のように聞こえたのは、
雑音だらけで何を言っているか聞こえない無線相手への返答だったのです。

途中の怒鳴り声も、
相手の声が全然聞こえず、苛立っていたのかもしれません。

乗客の私にはその“相手の声”がまったく聞こえないので、
あたかもひとりで感情的になっているように見えただけでした。

家のドアを閉めたとき、ようやく肩の力が抜けました。
誤解と疲労が混ざって、必要以上に怖がっていただけだと分かってホッとしたのを覚えています。

金曜の深夜に起きた、ちょっとしたすれ違いでした。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

 

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