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「もう無理です。辞めます。だって…」入社10年目・ベテラン社員の本音に職場中が凍りついた【短編小説】

すり減っていく心と、増え続ける仕事
入社して10年。私は「ベテラン社員」と呼ばれています。
気がつけば、一番の古株になっていました。朝は誰よりも早く出社し、夜は最後の「お疲れ様」を言うまでが、いつのまにか私の役割になっていました。
「これ、お願い。あなたなら安心だから」
「この新人、ちょっと厳しく指導してやって」
「今度のプロジェクト、あなたがリーダーじゃないと回らないよ」
上司や同僚からの「期待」という名のプレッシャーは、日に日に重くなっていきました。もちろん、頼りにされるのは悪い気はしません。で
も、私の抱える仕事は雪だるま式に増え続け、後輩のミスのフォローは深夜まで及びました。
「大丈夫です。できます」
そう笑顔で答えるのが、私の癖になっていました。本当は、とっくに大丈夫なんかじゃありませんでした。胃がキリキリと痛み、夜もろくに眠れない日が続いていても、会社に行けば「しっかりしたベテラン」の仮面をかぶるのです。
凍りついた会議室と、あふれ出た本音
その日も、そうでした。
定例会議の場で、またしても無謀なスケジュールの新企画が発表されました。誰がどう考えても、今のリソースでは無理な内容です。
案の定、会議の最後に部長が私を見ました。
「この件、中心になって進めてくれるね?君しかいないんだ」
いつもの光景でした。同僚たちは目を伏せ、私が「はい」と言うのを待っています。
プツン。
自分の中で、何かが切れる音がしました。
10年間、張り詰めていた糸が、静かに切れたのです。
私はゆっくりと立ち上がりました。会議室が不自然なほど静まり返ります。
「もう無理です。辞めます」
私の声は、自分でも驚くほど落ち着いていました。
「え?」と部長が聞き返します。周りのみんなが、信じられないものを見る目で私を見ていました。まさに、職場中が凍りついた瞬間でした。
「だって……」
私は、凍りついた全員の顔をゆっくりと見渡しました。
「だって、私だって限界なんです。誰も私のことを見てくれていないじゃないですか。もう、疲れました」
そう言い切ると、私は会議室を後にしました。
後ろで誰かが何かを叫んでいたような気もしますが、もうどうでもよかったのです。
会社を出て見上げた空は、皮肉なほど青く澄み渡っていました。明日からのことなんて、何も考えていません。でも、なぜだか涙は出ませんでした。10年間背負い続けた重い重い荷物を、ようやく下ろせた気がしました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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