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【スカッと】『派遣は正社員の下請けだろ』と私を侮辱した先輩。翌月、私は彼の上司になった【短編小説】

侮辱の一言
入社して半年、私は派遣社員として必死に仕事を覚え、成果を積み上げてきました。そんなある日、休憩室でコーヒーを飲んでいたときのことです。
「派遣なんて正社員の下請けだろ」
隣で笑いながらそう言ったのは、同じ部署の先輩・田村さんでした。冗談半分のつもりだったのでしょうが、その言葉は胸に突き刺さりました。
何も言い返せず、私はただ笑って受け流すふりをしました。
偶然目にした人事議事録
数週間後、人事部から部署全員にメールが届きました。
「来期の人事異動について」という件名に、PDFファイルが添付されています。誤送信かと思いつつ開くと、そこには異動予定者の一覧と昇格者の名前が記載されていました。
その中に、私の名前がありました——「正社員登用」「主任補佐」。
驚きと同時に、ある考えが頭をよぎりました。この議事録を、田村さんもきっと目にしているはずだと。
空気が変わった瞬間
翌日の朝礼。部長が正式に人事異動を発表しました。
「山本さんは来月から正社員として、主任補佐に就任します」
一瞬の沈黙の後、拍手が起こりました。その中で、田村さんは固まったように私を見ていました。
口角は引きつり、目が泳いでいる。昨日までの軽口は、影も形もありません。
その後の職場
それ以来、田村さんが「派遣」について何か言うことはなくなりました。むしろ、業務の相談を持ちかけてくることが増えたほどです。
私にとって、この出来事はただの昇格以上の意味を持ちました。立場や契約形態ではなく、努力をきちんと見てくれる人がいる。その事実が、自分を支える大きな力になったのです。
あの日の議事録一枚が、私の職場での空気も、そして自分の中の誇りも、大きく変えてくれました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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