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親友に裏切られ、グアムで無一文に。異国の地で絶望した私を救ったのは…【短編小説】

「最高の思い出作ろうね!」
親友のサキと行った初めてのグアム旅行。SNSに投稿した写真には、満面の笑みで写る私たちがいました。サキとは大学時代からの付き合いで、何でも話せるかけがえのない存在。この旅は、仕事で疲れた心を癒すための、私たちにとってのご褒美でした。
しかし、その幸せな時間は一瞬にして終わったのです。翌朝、目が覚めると、隣にいたはずのサキの姿がありませんでした。最初は「先に朝食でも食べに行ったのかな」と安易に考えていましたが、時間が経つにつれて不安が募ります。彼女の荷物も、私の財布も、そしてパスポートが入ったポーチまでもが、きれいに消えていたのです。
親友の裏切り、絶望のグアム
私は、グアムの街中で一人、途方に暮れていました。所持金ゼロ。スマホは充電切れ。言葉もままならない異国の地で、私は親友に裏切られたことを悟りました。
どうしてこんなことに…。怒り、悲しみ、そして何よりも信じていた親友に裏切られたことへの絶望が、私の心を支配しました。警察に行っても、私のつたない英語では話が通じない。私は空腹と疲労でフラフラになりながら、人通りから離れた、小さな村へと迷い込んでいきました。
異国の地で出会った、温かい心
そこで私を助けてくれたのは、村の小さな食堂を営む、マリアという優しいおばあさんでした。私が言葉に詰まりながら事情を話すと、マリアは何も言わずに私を食堂に入れてくれました。そして、温かいスープを一杯出してくれたのです。その素朴な味は、私の凍りついた心をゆっくりと溶かしてくれました。
私はマリアの食堂で、皿洗いや掃除を手伝うことになりました。マリアは英語はほとんど話せませんでしたが、身振り手振りでこの村に伝わる伝統料理のレシピを教えてくれました。それは、地味な食材を丁寧に扱い、心を込めて煮込む、シンプルな料理でした。マリアは私に、「お金はなくても、心を込めて料理を作れば、人は笑顔になるのよ」と、優しく語りかけてくれました。
日本に帰国してからも、私はマリアの言葉を忘れることはありませんでした。親友に裏切られた絶望は、私を一人にさせたけれど、マリアとの出会いは、私に心を込めて生きることの大切さを教えてくれたのです。私は、マリアから教わったレシピで小さな食堂を開きました。私の作るスープは、瞬く間に評判となり、今では多くのお客さんの心と体を温めています。あの日の裏切りは、私にとって新しい人生の扉を開くための、必要な出来事だったのだと、今は心からそう思えます。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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