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卒業式に出なかった私へ届いた、無断で作られた卒業アルバム。クラス全員から届いた言葉とは【短編小説】

卒業式に出なかった私へ届いた無断で作られた卒業アルバムクラス全員から届いた言葉とは短編小説

久しぶりに会った友人から渡されたのは…

高校3年生の秋、私は学校へ行けなくなりました。
教室での些細なすれ違いが、いつしか私を一人にさせ、心を固く閉ざしてしまったのです。

卒業式にも、もちろん出席はしませんでした。
クラスメイトの楽しそうな顔が並ぶ卒業アルバムも、手にすることはありませんでした。
私の高校時代の最後のページは、真っ白なままです。

それから10年が経ったある日、高校時代、唯一連絡をくれていた親友の結衣と久しぶりに会いました。
カフェで思い出話に花を咲かせ、店を出ようとした時、彼女は「これを渡したくて」と一冊のスクラップブックを私に差し出しました。

それは私だけの卒業アルバムでした

表紙には『3年B組卒業アルバム 沙耶へ』と書かれています。
無断で作られた、私だけの卒業アルバムでした。正直、胸がずきりと痛みました。
見たくない。楽しかったであろう皆の姿は、私の孤独を際立たせるだけだと思ったのです。

結衣に促され、私はおそるおそるページをめくりました。
文化祭、修学旅行…私がいるはずのなかった場所で、みんなが笑っています。
集合写真には、ぽっかりと一人分の空間が空いていて、それが私がいなかった事実を突きつけてくるようでした。

最後のページには、クラス全員の証明写真が並んでいました。
私の欄にも、学生証の、強張った顔の私がいます。涙が溢れそうになった、その時でした。

写真の横の、本来なら自分でメッセージを書くはずの空白に、たくさんの小さな文字が書き込まれていることに気がついたのです。

そこにあったのは私の居場所でした

『沙耶、卒業おめでとう!また一緒にたくさん笑おうね!-結衣』
『元気か?いつでも連絡してこいよな!-健太』
『沙耶の絵、文化祭で飾ったんだよ。みんな上手だって言ってた!-陽子』

それは、結衣が卒業式の日に、クラスのみんなに頼んで集めてくれたメッセージでした。
そして、私の名前の真横には、ひときゆわ大きな文字で、こう書かれていました。

「沙耶の席、ちゃんとあったよ」

ああ、そうか。集合写真に写っていたあの空間は、私を阻害した空白なんかじゃなかった。
みんなが、私のために空けておいてくれた、私の「居場所」だったんだ。

涙が止まりませんでした。
でもそれは、悲しい涙ではありません。
固く閉ざしていた私の心の扉を、みんなの優しさが、10年の時を経て、そっと開けてくれたような、温かい涙でした。私の卒業アルバムは、真っ白なんかじゃなかったのです。

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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