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妻「離婚しましょう」→「子どものために離婚はしない」と言う夫に、娘が放った本当の気持ち【短編小説】
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冷え切った夫婦関係
リビングの空気は、もう何年も前から冷え切っていました。私と夫の間には会話がなく、あるのは娘を介した最低限の「業務連絡」だけ。
娘が学校や部活で忙しくなり、家にいる時間が減るにつれて、その重苦しい空気はさらに濃くなっていくようでした。
もう、限界だ。
その日、夕食の後片付けを終え、夫がいつものようにスマートフォンに目を落としているのを確認して、私は口を開きました。
「離婚しましょう」
夫は顔も上げません。ただ、指の動きが止まりました。
「……本気で言ってるのか」
「本気よ。もう、あなたと夫婦としてやっていくのは無理なんです」
そこで初めて、夫は私を睨みつけました。
「ふざけるな。俺は絶対に離婚しない」
「どうして? 私たちの関係はとっくに終わってるわ」
夫は、まるで「正論」を叩きつけるかのように、声を荒らげました。
「子どものために離婚はしない!あいつが可哀想だと思わないのか? 親の勝手で離婚なんて、あいつを不幸にするだけだ。俺は、子どものために我慢してるんだぞ!」
子どものため。
その言葉を、私は何度夫の口から聞いたことでしょう。それは、彼にとって都合の良い「盾」であり、私を縛り付ける「鎖」でした。
私が何か反論しようとした、その時です。
見ていなかった娘の心
「……また、それ?」
声がした方を見ると、リビングのドアのところに娘が立っていました。いつから聞いていたのでしょう。娘は、冷めた目で私たちを交互に見ていました。
「お、起きてたのか。いや、これは、お前のことを思って……」
夫が慌てて取り繕おうとするのを、娘の静かな声が遮りました。
「私のために離婚しない、って本気で言ってるの?」
「当たり前だろ! お父さんはお前の将来が……」
「やめてよ」
娘のその一言は、驚くほど静かで、けれど重く響きました。
「私を、理由にしないで」
娘はまっすぐ夫を見つめて、続けます。
「私が一番不幸だと思うのは、こうやってお父さんとお母さんが、お互いを無視して、イヤイヤ一緒にいることだよ」
「……」
「私のために我慢するとか、そういうの、もう聞きたくない。私が本当に望んでるのは、二人が笑ってくれること。それが無理なら……無理なら、もうやめてもいいんだよ」
リビングに、重い沈黙が落ちました。
夫が振りかざした「盾」は、守ろうとしていたはずの娘自身の手によって、粉々に砕け散ったのです。
私たちは、一番大切にすべき娘の心を、まったく見ていなかったのかもしれないと、その時になってようやく気が付きました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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