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「育休なんて迷惑だ!」と嫌味を言う同僚の名前が、人事部からの異動の辞令に載っていたワケ【短編小説】

時短勤務の私と、嫌味な同僚
私が育児休業から復帰して、数ヶ月が経った頃のことです。
時短勤務を利用している私は、毎日夕方になると慌ただしく退社の準備を始めます。保育園のお迎え時間が迫っているからです。パソコンをシャットダウンし、「お先に失礼します」と頭を下げると、いつも突き刺さるような視線を感じていました。
視線の主は、同じチームの男性の同僚です。彼は私が育休に入る前、「正直、育休なんて迷惑だよね。こっちの負担が増えるだけだ」と、わざわざ私に聞こえるように言った人でした。
復帰後もその態度は変わらず、私が退社しようとすると、「いいよな、早く帰れて。こっちはこれからが勝負なのに」と皮肉たっぷりに言ってきます。
私は「すみません」と謝りながらも、制度を使っているだけなのに、どうしてこんなに肩身の狭い思いをしなければならないのかと、胸が苦しくなる毎日でした。
メールで見つけた「彼の名前」
そんなある日の午後、人事部から全社宛に「辞令」というタイトルのメールが届きました。
定期異動の季節でもないのに珍しいな、と思いながら添付ファイルを開くと、そこには数名の異動者のリストが載っていました。
目を走らせていくと、リストの最後に、あの嫌味な同僚の名前があったのです。私は思わず「えっ」と小さな声を漏らしてしまいました。
驚いたのは私だけではなかったようです。ざわつくオフィスの中で、隣の席の先輩がこっそり私に耳打ちしました。
「彼、希望して異動するそうよ。なんでも、ご家族の事情で、これからは彼が家のことを色々やらないといけなくなったみたい。今の部署だと残業も多いから、定時で上がれる部署じゃないと難しいんだって」
その話を聞いて、私は胸が締め付けられるような、なんとも言えない気持ちになりました。
「迷惑だ」と言っていた彼が、今度は家庭の事情で、彼自身の言葉を借りるなら「周りに迷惑をかけるかもしれない」働き方を、選ばざるを得なくなったのです。
もちろん、彼を責める気持ちはありませんでした。ただ、誰にだって、いつだって、仕事より家庭を優先しなければならない時は来るのだと、改めて感じました。
「お互い様」という言葉が、頭の中をぐるぐると巡っていました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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