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「キラキラして羨ましい」とSNSで言われてきた私。ある同僚の行動で人生観を変えさせられた【短編小説】

偽りの日常
「みんな幸せそうだね」と私がコメントを返した、あの華やかな投稿。
そこに写る友人たちと私の笑顔は、もちろん本物でした。
少なくとも、シャッターが押されたあの瞬間だけは。
平日は事務職として働き、週末は友人と話題のカフェを巡ったり、新作のコスメをチェックしたり。
そんな日常をSNSに投稿するのが、いつからか私の日課になっていました。
「彩音の投稿、いつもキラキラしてるね」「キラキラして羨ましい」
友人たちからのそんな言葉が、私の「もっと頑張らなくちゃ」という気持ちを加速させました。
本当は、次のカードの支払いに怯え、ランチは500円以下と決めて節約しているのに。
写真の中の私は、流行りのブランドバッグを持ち、高そうなディナーを楽しんでいます。
でも、そのバッグは見栄を張って分割払いで買ったもので、ディナーは「一口ちょうだい」と友人の洋子のプレートを借りて撮ったものでした。
「いいね」の数が、まるで自分の価値のように思えていたんです。
「誰かのため」から「自分のため」の投稿へ
そんなある日、会社の給湯室で、同僚の柊さんと一緒になりました。
柊さんは、私とは正反対。
いつも落ち着いていて、服装もメイクも控えめ。SNSなんてやっていなさそうな人です。
彼女は、私が週末に投稿した「限定アフタヌーンティー」の写真を見ていたようでした。
「橘さん、週末にあのホテル行ったんですね。素敵。私、ああいう場所って緊張しちゃって」
「あ、ええ。たまには、ね。柊さんは週末どうだったんですか?」
「私は、家でずっとパンを焼いてました。形は不格好だけど、焼きたては最高ですよ」
そう言って笑う柊さんの笑顔は、とても自然で、私のお手本のような「SNS用の笑顔」とはまったく違うものでした。
その週末、私は洋子たちとの集まりを断りました。
代わりに、スーパーで安い強力粉とドライイーストを買いました。
柊さんが話していたパンを、自分でも作ってみようと思ったのです。
キッチンは粉まみれになり、出来上がったパンは、お世辞にも美味しそうとは言えない、岩のような見た目になりました。
でも、オーブンから出した時の香ばしい匂いは、どんな高級ディナーよりも私の心を温かくしました。
私は、その黒焦げのパンの写真を撮りました。
加工もせず、おしゃれなフィルターもかけずに。
そして、新しく作った、誰にも教えていないSNSアカウントに、一言だけ添えて投稿しました。
『初めてのパン。失敗!』
「いいね」は一つもつきません。でも、なぜか、あのキラキラした投稿をしていた時よりも、ずっと胸がスッキリしていました。
「幸せ」は、誰かに見せるものじゃない。私が、今、感じるものなんですね。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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