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「離婚届、どっちが先に出す?」冷え切った夫婦関係で起きた予想外の逆転劇とは?【短編小説】
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テーブルの上にある離婚届
テーブルの上に置かれた一枚の緑色の紙。夫の拓也(たくや)との関係を終わらせるための離婚届です。
どちらかが記入するだけで終わりなのに、その紙は一週間もそこに置かれたままでした。
私たち夫婦の関係は、とうの昔に冷え切っていました。
同じ家に住みながら会話はほとんどなく、拓也は帰宅するとスマホに夢中。私は私で趣味に没頭する。お互いが空気のような存在。それが私たちの日常でした。
「ねえ、拓也」
ある晩、しびれを切らした私が声をかけました。
彼はスマホから目を離さずに「なに?」と短い返事。その態度に、私の心の中で何かが切れました。
「この紙、いつまで置いとくの?プライドの張り合いみたいで馬鹿らしいんだけど」
私の言葉に、拓也の手がピタリと止まります。
ゆっくりと顔を上げた彼と、久しぶりに目が合いました。その顔は少し疲れているように見えました。
私は畳みかけるように、心の中にあった言葉をぶつけます。
「離婚届、どっちが先に出す?」
このチキンレースのような状況を、早く終わらせたかった。
これで彼も「じゃあ俺が出す」とでも言って、すべてが終わるはずでした。
彼の口からは意外な言葉が
ところが、拓也の口から出たのは予想外の言葉でした。
「……美咲(みさき)は、俺に出してほしいの?」
その声は怒っているわけでも、呆れているわけでもなく、とても弱々しく聞こえました。
「怖かったんだ。俺がこれを出したら、美咲が本当にいなくなる気がして」
彼の言葉にハッとしました。私も同じだったのかもしれません。
この紙を出すことで、関係が終わるという現実を突きつけられるのが怖かった。冷え切っていると思っていたのは、お互いに意地を張って、寂しい本音を隠していただけだったのです。
その日、私たちは数年ぶりに朝まで語り合いました。離婚届はまだテーブルの上にあります。でも、その紙の色は以前よりも少しだけ、温かく見えました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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