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合格証を手にした帰り道→亡き祖父の形見の万年筆が光って見えた【短編小説】

試験の帰り道
司法試験。そのあまりにも高い壁に、私は何度も心を折られました。
友達が就職し、人生を謳歌していく中で、私は一人分厚い参考書と向き合う日々。
そんな孤独な戦いを、ずっと支えてくれていたものがあります。
それは三年前に亡くなった祖父、浩介が遺してくれた、一本の万年筆でした。
『栞の夢を、このペンで書きなさい』
生前、私の夢を誰よりも応援してくれていた祖父の、優しい声が今も耳に残っています。
この万年筆を握ると、不思議と心が落ち着き、「もう少しだけ頑張ろう」と前を向けたのです。
そして今日、私は合格証を手にしました。
二年間、私の全てだった戦いがようやく終わったのです。
夢が叶ったというのに、喜びよりもなぜか胸にぽっかりと穴が空いたような、不思議な気持ちでした。
一番にこの合格を伝えたかった祖父は、もうこの世にいません。
ぼんやりとした頭で、帰りの電車に揺られていました。
カバンから、そっとあの万年筆を取り出し、膝の上に置いた合格証の隣に並べます。
万年筆に差し込む光
ちょうどその時、電車がトンネルを抜け、窓から夕陽が強い光の筋となって差し込んできました。
その光が、まっすぐに万年筆の金色のペン先を照らしたのです。
まるで万年筆そのものが、内側から誇らしげな光を放っているようでした。
その神々しいほどの輝きを見た瞬間、私の目から涙が溢れ出しました。
「おじいちゃん…、やったよ」
声にはなりませんでした。
でも、万年筆の光が、「よく頑張ったな」という祖父からの祝福の言葉のように、私の心を温かく包み込んでくれたのです。
祖父の形見は、ただのペンではありませんでした。
私の夢を支え、そして今、その達成を誰よりも喜んでくれる、祖父の魂そのものだったのかもしれません。夕陽に照らされたその輝きを、私は一生、忘れないでしょう。
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本記事は、資格取得をテーマにした創作の小説であり、登場する人物や団体、出来事はすべて架空のものです。記事内で描かれている資格取得による転職やその後の展開は物語上の演出であり、同様の結果を保証するものではありません。
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