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夢と成長のアート体験を横浜で。日伊合作オペラ「エマと青いバク」&「ペレグリンと大きな魚」KAAT神奈川芸術劇場にて上演
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この夏、KAAT神奈川芸術劇場にて、子どもから大人まで楽しめる特別な舞台が幕を開ける。日伊のアーティストが手を取り合って生み出した、こどもオペラ「エマと青いバク」と、オペラシネマ「ペレグリンと大きな魚」文化、教育、音楽、演劇、多彩な要素が交差する舞台。
2025年8月16日(土)と17日(日)にてKAAT神奈川芸術劇場にて上演されます。
ミラノ発、“夢を食べるバク”の物語
このプロジェクトの出発点は、イタリア・ミラノの名門美術館「ブレラ絵画館(Pinacoteca di Brera)」にある。館長を務めたジェームズ・M. ブラッドバーン氏が、幼い姪のために書いた一編の物語が原点だ。
何度も日本を旅した彼は、京都や長崎で出会った風景や文化に強く心を動かされる。そのなかで、日本の伝説に登場する “バク”を題材に、悪夢を食べてくれる存在として描いた短編『In the Night Garden(夜の庭で)』を執筆。
それがやがて、作曲家ブルース・アドルフとの出会いを経てオペラ化され、ブレラ美術館で上演される。今回はその作品を、日伊合同で再構成し、日本版として新たに舞台化する。
子どもの心に寄り添うオペラ「エマと青いバク」

物語の主人公は、8歳の女の子・エマ。自分のやり方にこだわり、友達を作るのが苦手な彼女は、ある夜、不思議な青いバクと出会う。「悪い夢しか食べたことがない」というバクに、楽しい夢の美味しさを教えてあげたい。そんなエマの小さな冒険が始まる。
エマを演じるのは、国際的に活躍するソプラノ小林沙羅。バクには、バリトン大山大輔がユーモラスかつ温かみある存在感で応える。演出は、ミラノとパリで活動する井田邦明が担当し、子どもたちの“参加”を意識した演出が施されている。
舞台には、神奈川在住の子どもたちも多数出演。単なる鑑賞ではなく、子ども自身が舞台に関わることで、学びと成長の場となることを目指している。
幻想的な映像で綴る「ペレグリンと大きな魚」

もう一つの作品「ペレグリンと大きな魚」は、人形劇を映像化した“オペラシネマ”。内気な少年ペレグリンが巨大な魚に導かれ、ユートピアのような島へ旅するファンタジーだ。
フロイトの姪による幻想的な挿絵がモチーフとなっており、映像美と音楽が静かに響き合う。 この作品では「観る」ことに重点が置かれているが、視覚と聴覚を通じて心の内面に問いかけるような静かな力を持っている。大人が見ても涙してしまうような、深い余韻を残す一作だ。
音楽と教育のプロが支える舞台

作曲家のブルース・アドルフは、アメリカの名門リンカーンセンターで長年子ども向け音楽を手がけ、科学や数学と音楽を結びつける試みでも知られる。今回の「エマと青いバク」でも、数学的なリズム構造を意識し、単なる童謡調の“子ども向け音楽”ではなく、大人も耳を傾けたくなるような繊細な音作りがなされている。
また、チェンバロ、ハープ、マリンバなど、普段なかなか聴けない楽器編成も魅力。指揮は日本の他にイタリア、スペインなどで活躍する高木耀子、演奏には三村 奈々恵(ヴィブラホン)、江澤 隆行(ピアノ)、岩下 真麻(チェンバロ)、黒岩 妃奈乃(ハープ)、田中 桂一朗(マリンバ)など、実力派が揃う。
翻訳は詩人・作家の※向坂くじらが担当し、子どもたちの言葉に寄り添うやわらかで詩的な日本語が、舞台に彩りを添えている。
※向坂くじら(デビュー作から2024年、2025年2年連続で芥川賞にノミネート)
ブレラ美術館が育んだ“アートと教育の融合”

本プロジェクトの土台ともいえるブレラ美術館は、ミラノにあるイタリア屈指の美術館。ラファエロ、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、カラヴァッジョなどの名画を収蔵しながらも、教育と文化の融合を大切にしてきた。
特に、ジェームズ・M. ブラッドバーン館長(当時)は「子どもと大人が一緒にアートを体験する場」として美術館改革を進め、詩的な解説や対話型展示を導入。その流れが、本オペラ制作にもつながっている。
公演情報

・公演日程:2025年8月16日(土)13:00/17:
・会場:KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
・料金:一般7,000円、高校生以下5,000円
・チケット:先行販売 5月31日(金)~、一般発売 6月6日(木)~
・託児サービスあり(0歳〜12歳まで要予約・有料)
関連イベント
・スペシャルワークショップ(衣装&美術)
2025年7月21日(月)舞台美術ワークショップは対象年齢
5歳〜小学生(保護者から離れて活動できる方)となります。
自分で作った小道具や衣装が実際の公演で使用される特別な体験!
・オープニング・シンポジウム
2025年8月15日(金)13:00~(KAAT大スタジオ)
出演:ジェームズ・M. ブラッドバーン、井田邦明、ブルース・アドルフほか
テーマ:「子どもの創造性とアート教育の未来」
・KIDS RUNWAY
2025年8月15日(金) 15:00 スタート(参加費無料・要事前予約)
詳細は公式サイトにて
アートが「自分のもの」になる時間を
この舞台は、ただの“子ども向け”オペラではない。大人にとっても、かつての子どもだった自分に再会するような時間であり、アートや教育の本質に触れる体験でもある。
夢を食べるバクと、それを見つめるエマの姿に、あなたは何を感じるだろうか。この夏、“感じて、考えて、参加する”芸術の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
公式サイトはこちらから
・チケット販売 KAAT公式サイト「エマと青いバク/ペレグリンと大きな魚」
https://www.kaat.jp/d/breraopera
・こどもとおとなのオペラプロジェクト公式サイト
https://kids-opera.jp
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