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「この子…誰?」保育園に我が子を迎えに行ったら、知らない子供が手を繋いできた悲しい理由【短編小説】

私を見つめる知らない瞳
夕方の慌ただしい保育園。
「お迎え、遅くなっちゃった」
小走りで息子のクラスへ向かうと、息子はちょうどおもちゃを片付けているところでした。
「あ、ママ!」 私を見つけて、パッと笑顔になる息子。私も「待たせてごめんね」と声をかけ、上着を着せるためにしゃがみ込みました。
息子が私の首に抱きついてきた、その時です。
ふわりと、息子の匂いとは違う、甘いミルクのような匂い。 そして、息子の手とは反対側の私の左手を、小さな手がぎゅっと握りしめてきました。
「…え?」
視線を落とすと、そこには知らない女の子が立っていました。肩までの髪を二つに結んだ、可愛らしい子。息子と同じクラスではないはずです。
(この子…誰?)
女の子は何も言わず、ただまっすぐ私を見上げています。息子も不思議そうに「だれ?」と首を傾げていました。
私がどうしようかと戸惑っていると、ベテランの保育士さんが慌てた様子で駆け寄ってきました。
「ごめんなさいね!ほら、あなたのお迎えはパパでしょう?」
保育士さんが優しく声をかけると、女の子は私をじっと見たまま、小さな声で「…ママ」とつぶやいたのです。
胸がどきりとしました。
保育士さんは女の子をそっと抱き上げ、私に「すみません、あちらで少し…」と目配せしました。息子には「ちょっと待っててね」と言い、私は保育士さんの後を追いました。
保育士さんが明かした、胸が痛む理由
「あの子…最近、お母さんを事故で亡くしたばかりなんです」
保育士さんは、声を潜めて教えてくれました。
「今日はパパのお仕事が長引いて、お迎えが一番最後になってしまって。寂しかったんだと思います」
話によると、私が着ていたベージュのカーディガンが、女の子のお母さんのお気に入りの服とよく似ていたそうです。
お迎えに来る母親たちをずっと目で追っていた女の子は、私を見て、大好きなお母さんが迎えに来てくれたと、一瞬、思ってしまったのでしょう。
手を繋いできたのは、きっと「やっと会えた」という安堵と、「もうどこにも行かないで」という必死の思いからだったのかもしれません。
そうこうしているうちに、息を切らした若い男性が「すみません!」と保育園に飛び込んできました。あの子のパパでした。
女の子は「パパ!」と駆け寄り、パパの胸に顔をうずめて、こらえていたように小さくしゃくり上げました。
私は、何事もなかったかのように息子のもとへ戻り、今度はしっかりと、強く息子の手を握りました。
いつも当たり前に繋いでいる、この小さな手のぬくもり。あの子が握りしめたかった重さを思い、胸の奥がきゅっと締め付けられました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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