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母と口喧嘩。「産まなきゃよかった」この言葉に傷ついた夜、机の奥から古い日記を見つけた【短編小説】

心が凍りついた夜
些細なことでした。夕食の片付けを手伝わなかったとか、最近うまくいかない就職活動のことで私がイライラしていたとか。でも、その日の私と母は、お互いに限界だったのだと思います。
「もう、あなたなんか!」
「そっちこそ、いつもガミガミうるさい!」
売り言葉に買い言葉。ヒートアップした母の口から、この言葉が飛び出しました。
「本当に、産まなきゃよかった」
シン、とリビングが静まり返りました。母はハッとした顔で口を押さえましたが、もう遅い。私の心臓は冷たい水に沈んだように、ドクンと重い音を立てました。
涙が溢れるのを我慢できず、私は「もう知らない!」と叫んで自分の部屋に駆け込み、ドアに鍵をかけました。
ベッドに突っ伏して、声を殺して泣きました。産まなきゃよかった? 私が生まれてきたことは、間違いだったの? 母はずっとそう思って私を育ててきたのでしょうか。ぐるぐると黒い考えが頭を巡ります。
どれくらい泣いていたでしょう。ふと顔を上げると、部屋の隅にある古い勉強机が目に入りました。もう何年も使っていない、奥の引き出し。なぜだか無性に気になり、引き出しを開けてみました。
机の奥で見つけた、母の「本音」
ガラクタに混じって、小さな鍵のかかった日記帳が一つ。表紙には見覚えのある、母の丸い文字。
好奇心が恐怖を上回りました。近くの小物入れに入っていた小さな鍵を差し込むと、カチリと音がして日記は開きました。
それは、私が生まれる少し前の、母の日記でした。そこには、今の私と同じように、不安と焦りでいっぱいの母がいました。
『つわりが酷くて何も食べられない。本当に赤ちゃんは無事だろうか』
『夫は仕事が忙しく、話を聞いてくれない。一人で全部抱えている気がして、夜中に泣いてしまった』
『こんなに不安で、私なんかが母親になれるんだろうか』
ページをめくる手が震えました。母も、悩んでいたのです。
そして、出産予定日が近づくにつれ、日記のトーンが変わっていきました。
『お腹を蹴る力が強くなった。生きている。ここにいる』
『早く会いたい。どんな顔をしているんだろう』
『どうか、無事に、元気に生まれてきて。あなたに会える日を待ってる』
私は、日記を抱きしめていました。さっきとは違う、温かい涙が頬を伝わりました。
あの言葉は、母の本心じゃなかった。今の母が、仕事や色々なことに疲れて、つい口走ってしまっただけ。そう思えました。
そして何より、私は「生まれてきてほしい」と強く願われて、この世にやってきたんだと分かりました。
私はそっと部屋を出て、リビングに戻りました。母は、テーブルに突っ伏して小さく泣いていました。
「お母さん」
声をかけると、ビクッと肩が揺れました。
「…さっきは、ごめん」
「…私こそ、ごめんね。あんなこと言って」
まだ心はズキズキと痛みます。でも、机の奥から見つけたあの日の母の言葉が、私を支えてくれる気がしました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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