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「親の介護なんて押し付けるな」兄の逆ギレ。親の枕元の日記で態度が一変したワケ。実は…【短編小説】
INDEX

自分勝手な兄の言い分
「親の介護なんて押し付けるな!俺には俺の生活があるんだ!」
実家のリビングに、兄の怒声が響き渡りました。母が脳梗塞で倒れ、幸い命に別状はなかったものの、今後の生活について相談しようとした矢先の出来事です。
兄は既婚で持ち家があり、私は独身で実家暮らし。だからといって、私ひとりに介護の全てを背負わせようとする兄の態度には、どうしても納得がいきませんでした。
「長男として一番優遇されて育ったくせに」という言葉を飲み込むのが精一杯でした。
「私だって仕事があるのよ。協力してくれないなら、施設だって考えなきゃいけない」
そう訴えても、兄は「遺産もいらないから面倒もかけないでくれ」の一点張り。家族なのに、どうしてここまで冷たくなれるのでしょうか。
兄の自分勝手な言い分に、私は情けなさと怒りで体が震えました。
母が隠し続けた深い愛
空気は最悪のまま、数日が過ぎました。母の入院手続きなどで、どうしても兄と顔を合わせなければならない機会がありました。
母が検査で不在の病室。気まずい沈黙に耐えかねたのか、兄は手持ち無沙汰に部屋を見渡し、枕元にあった古びた大学ノートを手に取りました。
「なんだこれ、汚いノートだな」
兄は暇つぶし程度に、パラパラとページをめくり始めたのです。
それは、母が長年書き溜めていた日記でした。最初は興味なさそうに眺めていた兄の背中が、あるページでピタリと止まりました。そこから動かなくなり、やがて肩が小刻みに震え始めたのです。
「……おい、これ」
振り返った兄の顔を見て、私は息を呑みました。あれほど頑なだった兄の目から、ボロボロと涙が溢れ落ちていたからです。
私も慌てて覗き込むと、そこには震える文字で、兄への想いが綴られていました。
『あの子が昔、事業に失敗して作った借金、今日でやっと完済できた。あの子は「もう時効だろ」なんて笑っていたけれど、私が肩代わりして払い続けていたなんて言えないわね。私の老後資金は空っぽになっちゃったけれど、あの子が後ろ指さされずに生きられるなら安いもの』
兄は知らなかったのです。自分が若気の至りで作り、返済から逃げ回ってうやむやにしていた借金を、保証人になっていた母が誰にも言わず、自分の生活を切り詰めて償っていたことを。
母は兄を責めるどころか、その再出発を陰ながら支え続けていたのでした。
「俺、なんてことを……母さん、ごめん」
兄はその場に崩れ落ち、子供のように泣きじゃくりました。親の心子知らずとは言いますが、母の愛情は私たちが想像するよりもずっと深く、そして大きなものだったのです。
あの日以来、兄の態度は一変しました。「仕事が忙しい」という言い訳は一切しなくなり、週末は必ず病院へ通い、退院後のケアプランも率先して考えてくれています。
「母さんに貰った人生、今度は俺が返す番だ」
そう語る兄の横顔は、以前よりずっと頼もしく見えました。
一冊の日記が、バラバラになりかけた家族を再び繋いでくれたのです。介護はこれからが本番ですが、今の私たちならきっと大丈夫だと信じています。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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