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「定時退社とか社会人舐めてるの?」と吐き捨てた上司。部下の退社理由を聞き顔色が一変。実は【短編小説】

定時退社とか社会人舐めてるのと吐き捨てた上司部下の退社理由を聞き顔色が一変実は短編小説

凍りついたオフィスの空気

定時のチャイムが鳴り響くと同時に、私は急いでパソコンの電源を落としました。いつもは私も当たり前のように残業しています。

ですが、今日だけは、一刻も早く会社を出なければならない、特別な理由がありました。

「お先に失礼します」

まだ多くの同僚がデスクに向かっている中、私が上着を手に取りドアへ向かおうとした、その時です。

「おい」

部署で一番声が大きく、そして「残業こそが美徳」だと信じて疑わないタイプの上司でした。

「定時退社とか社会人舐めてるの?」

吐き捨てるようなその言葉に、オフィスの空気が一瞬で凍りつきました。キーボードを打つ音が止み、全員の視線が私と上司に集まるのが肌で分かりました。

上司は、まるで出来の悪い部下を指導してやる、とでも言いたげな意地の悪い笑みを浮かべて私を睨みつけています。

周りの同僚たちは、助け舟を出してくれるでもなく、ただ気まずそうに自分のモニターに目を落としています。この上司の「残業している俺は偉い」という圧に、みんな辟易しているのを知っています。

ですが、ここで逆らって面倒なことになるのは避けたい。その気持ちも痛いほど分かりました。

私はいつもなら「すみません……」と曖昧に笑って、この場をやり過ごすところです。

ですが、今日ばかりは、そうはいきませんでした。

私が告げた「本当の理由」

私は上司の方へ静かに向き直りました。心の動揺を必死で抑え、できるだけ落ち着いて、けれどはっきりとオフィスに響く声で告げました。

「申し訳ありません。先ほど、病院にいる母の容態が急変したと、連絡がありまして」

一瞬の間がありました。上司はまだ、何を言われたのか分からない、という顔をしています。

私は続けました。

「……今夜が、山だそうです。ですから、失礼します」

私がそう言い切ると、上司の顔色が変わりました。

さっきまでの自信に満ちた意地の悪い表情は消え去り、みるみるうちに血の気が引いていくのが分かりました。

「え……あ、いや、それは……知らなくて……」

上司は何か言おうと口をパクパクさせていますが、しどろもどろで言葉にならないようです。「社会人舐めてる」と一方的に決めつけた相手が、今まさに、家族の危篤で駆けつけようとしている。

その状況で、自分がどれほど配慮のない、取り返しのつかない言葉を投げつけたのか、ようやく理解したのでしょう。

「そ、そうか……いや、すまなかった。早く、行ってやれ」

しどろもどろにそう言う上司を、私はもう見ていませんでした。

「失礼します」

私はもう一度深く頭を下げ、今度こそオフィスを後にしました。ドアが閉まる直前、上司が力なくデスクに座り込むのが見えた気がしました。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

 

 

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