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推し活を全否定するドケチな友人。貸したお金の返済を渋るので、”ある証拠”を見せたら態度が豹変!【短編小説】

推し活を全否定するドケチな友人
「そのチケット代で、投資の勉強でもすれば将来につながるのに」
カフェのテーブルに置いた、ミュージカルのチケット。
それを見た友人の真由は、いつものように心底呆れたという顔で私に言いました。
真由は「貯金が趣味」と公言するほどの倹約家で、私の生きがいである”推し活”を、いつもそうやって見下すのです。
「私にとっては、これも将来のための投資だよ。この舞台を観るから、また明日から仕事を頑張れるんだから」
「はいはい。その理屈、聞き飽きた」
彼女とは学生時代からの友人ですが、価値観は正反対でした。
私は自分の稼いだお金で、大好きな舞台俳優の彼を応援することに幸せを感じています。
一方、実家暮らしで生活費を切り詰めている真由は、そうした消費を「無駄」と断じるのでした。
そんな彼女から「お願いがある」と、改まって連絡が来たのは3ヶ月前のことです。
「ファイナンシャルプランナーの資格を取りたいの。でも、教材費と受験料で5万円ほど足りなくて…。将来のための自己投資だから、絶対に無駄にはしない。ボーナスが出たら必ず返すから、貸してもらえないかな?」
真剣な眼差しと「自己投資」という言葉に、私は彼女の将来を応援したいと思い、快く5万円を貸しました。
しかし、約束のボーナス月を過ぎても、お金が返ってくる気配はありませんでした。
募っていく不信感と、彼女の嘘
「ごめん!今月、親戚の結婚式が重なっちゃって…。もうちょっとだけ待ってくれる?」
カフェで会うたびに、真由は申し訳なさそうな顔でそう繰り返します。
しかし同じ頃、共通の友人から私は奇妙な話を聞いていました。
「真由、最近どうしたのかな?『すごい投資家を知ってる』とか言って、変な食事会に誘われるんだけど…」
資格の勉強をしているはずの彼女の口から出る「投資家」という言葉。
私の心に、小さな疑念の種がまかれました。
そしてその疑念は、ある週末に確信へと変わったのです。
それは、私の”推し”が出演する舞台の、地方公演での出来事でした。
観劇を終えた私が、感動の余韻に浸りながら駅ビルを歩いていると、見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできました。
真由です。 彼女は、派手なスーツを着た男女グループと一緒に、通行人に何かの冊子を配っていました。
遠目からでも「誰でも月収100万円!」「不労所得で自由な人生を!」といった、安っぽい謳い文句が読み取れます。
私の頭が、サーッと冷えていくのを感じました。彼女が言っていた「自己投資」の正体は、これだったのです。私が汗水たらして稼ぎ、彼女の未来を思って貸したお金は、こんな胡散臭い活動の資金になっていた……。
私は気づかれないよう距離を取り、その様子の一部始終を、スマートフォンの動画に収めました。
突きつけた”動かぬ証拠”
後日、私は真由をいつものカフェに呼び出しました。
「お金の件、どうなったかな?」 私がそう切り出すと、真由は待っていましたとばかりに大げさにため息をつきました。
「まだ言うの?しつこいな。それより、あなたこそまた地方まで舞台を観に行ったんでしょ?そんな無駄遣いしてる余裕があるなら、5万円くらい黙って待てないわけ?」
その完璧な逆ギレを聞き届けた後、私は静かにスマートフォンを取り出しました。そして、先日撮影した動画を、彼女の目の前で再生したのです。
駅ビルで、大きな声で客引きをする真由の姿。
楽しそうな笑顔。
しかし、動画の中の自分の姿を見た瞬間、真由の顔から表情が消えました。
「あなたの言う『ファイナンシャルプランナーの勉強』って、これのことだったんだね。私が貸した5万円も、その『誰でも月収100万円』の教材費に変わったのかな?」
「なっ……!ちが、これは……その、ボランティアで……!」 「ボランティアで、友人から借りたお金を返す当てもなく、高額なセミナーに勧誘するんだ。すごいね」
私の冷たい声に、真由の顔はみるみるうちに青ざめていきました。
彼女が必死に守ってきた「地に足のついた堅実な自分」という仮面が、剥がれ落ちていく音が聞こえるようでした。
「ご、ごめんなさい!すぐに返します!今すぐ返すから!だから、その動画は……!」 テーブルに突っ伏さんばかりの勢いで謝る彼女を、私はただ無感情に見つめていました。
「お金はもちろん返してもらいます。でも、私たちの友情はもう終わり。あなたの言う”有意義なお金の使い方”は、私の価値観とはあまりに違いすぎるから」
そう言い残して席を立つ私を、彼女は引き止めることさえできませんでした。
翌日、彼女の親から工面したであろうお金が、私の口座に振り込まれていました。
他人の”好き”を愚直に否定する人ほど、自分自身の足元が見えていないのかもしれません。
私は、誰かを騙したりしない、この胸を張れる推し活が大好きです。
私はそのお金で、次の舞台のチケットを予約しました。
彼に会うために、また明日から仕事を頑張ろう。心から、そう思えたのです。
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