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人の推しグッズを勝手に開封し、動画を上げたルームメイト。→その動画が大炎上しフルボッコに【短編小説】

私には、絶対に譲れない「聖域」があります。それは、大好きな推し、K君のグッズを収めた棚のこと。ルームメイトの美優は、そんな私の趣味をいつも少し馬鹿にしたように見ていました。
私にとっての「宝物」と、彼女の「おもちゃ」
「また同じ顔のグッズ買ってるの?ウケる」
彼女にとって、私がなけなしのお金をはたいて手に入れた限定アクリルスタンドは、ただの“プラスチックの板”でしかないのです。価値観の違いは仕方ない、と自分に言い聞かせてきましたが、その考えが甘かったことを、私はすぐに知ることになります。
その日、私は3ヶ月前から予約していた、K君の活動5周年記念の豪華版Blu-rayが届くのを、仕事中もそわそわしながら待っていました。
勝手に開封された“推し”のグッズ
仕事を終え、急いで家に帰ると、玄関に見慣れた段ボール箱が。しかし、その箱は無残にもバリバリに破り捨てられていました。嫌な予感がしてリビングへ駆け込むと、そこには信じがたい光景が広がっていました。
美優が、私の宝物であるはずのBlu-rayの特典ポストカードを指で弾き、ケラケラと笑っていたのです。
「あ、おかえりー。なんか届いてたから開けといたよ。この人、誰だっけ?」
私の頭は、怒りで真っ白になりました。私がどれだけこの日を楽しみにしていたか、彼女は知っていたはずなのに。
SNSに投稿された「開封の儀(笑)」
私が言葉を失っていると、美優はスマホをいじりながら言いました。 「あ、さっきこれ開ける動画撮ってTikTokにあげといたから!『ルームメイトの推しグッズ開封してみたw』ってやつ。意外とバズるかもね!」
その言葉を聞いた瞬間、私は怒りを通り越して、冷たい諦めのような感情に包まれました。もう、この人とは一緒にいられない。 私は無言で自分の部屋に戻り、スマホでTikTokを開きました。
そこには、私の宝物を雑に扱い、「この人の良さがマジでわからん」と嘲笑する美優の姿が。しかし、コメント欄の様子は、彼女の予想とは全く違っていたようです。
自業自得の“大炎上”と、彼女の末路
「人の宝物を何だと思ってんの?」 「限定版の特典に指紋つけるとか、ありえないんだけど」 「こういう奴がいるからオタクはつらい。今すぐ謝って弁償しろ」
コメント欄は、私と同じ“オタク”たちの怒りの声で埋め尽くされ、まさに地獄絵図でした。動画は瞬く間に拡散され、美優のアカウントは大炎上。
数時間後、彼女は泣きそうな顔で私の部屋のドアを叩きました。 「ねえ、どうしよう…すごい数のDMが来て怖い…」
私はドアを開けずに、静かに言いました。
「それが、あなたがしたことの“評価”だよ。私からも一つだけコメントしてあげるね。『人の宝物を笑う者は、その宝物を愛する全ての人々から笑われる』って」
翌日、美優は荷物をまとめてこの部屋から出ていきました。残されたのは、指紋だらけのBlu-rayケースだけ。私はそれを丁寧に拭きながら、SNSの向こう側にいる、顔も知らない“仲間”たちに、心の中でそっと感謝しました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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