Share
「来週から来なくていい」とパワハラ上司に言われデスクも撤去されたけど、1週間で全てを覆した話。【短編小説】

「そんなに会社に来たくないなら、もう来週から来なくていい!」
会議室に響いた、上司の怒声。在宅勤務を申請した私に彼が放ったその言葉が、まさか彼のキャリアを終わらせるブーメランになろうとは、この時の彼は知る由もありませんでした。
発端は、丁寧すぎた業務提案
私はマーケティング会社で働く入社3年目の社員。業務の9割がPCで完結するため、生産性向上のために在宅勤務の導入を上司である吉田課長に提案しました。
しかし、「部下は自分の目の前で働くべき」という古い価値観を持つ課長にとって、私の提案は反抗に聞こえたようです。彼はみるみる表情をこわばらせ、冒頭の言葉を私に叩きつけました。
「承知しました」とだけ返し、静かに席に戻った私。 まさか本気だとは思っていませんでした。しかし翌週、彼の狂気を思い知ることになります。
出社すると、私のデスクが跡形もなく消えていたのです。 私の私物は段ボールに詰められ、まるでゴミのように倉庫の隅に追いやられていました。彼は、本気で私を会社から追い出すつもりでした。
「事実」という名の反撃準備
目の前が真っ暗になりかけました。しかし、ここで泣き寝入りする私ではありません。「来なくていい」と言われ、デスクまで撤去する。これは単なるパワハラではなく、不当解雇に繋がりかねない越権行為です。
私は冷静さを取り戻し、すぐに行動を開始しました。
幸い、社用PCにはまだアクセスできました。私はこの1年間、自分がどれだけ会社に貢献してきたかを証明するため、あらゆるデータを集め始めました。
-
担当案件の売上推移と利益率
-
企画書の採用実績と、それによる具体的なコスト削減額
-
クライアントから名指しでいただいた感謝のメール
これらの客観的な「事実」を一つのファイルにまとめ上げ、私は人事部長の元へ直接向かいました。
審判の金曜日
「吉田課長から『来週から来なくていい』と通告され、本日出社したところデスクが撤去されておりました。これは会社の正式な決定でしょうか?」
私の淡々とした問いかけと、分厚い実績ファイルの説得力に、人事部長は事態の深刻さをすぐに理解してくれたようでした。ファイルはそのまま経営会議にかけられ、「不適切な労務管理とパワハラ、部下の功績横領の疑い」として正式な調査が開始されました。
そして、運命の金曜日。 全社員が参加する全体ミーティングで、人事部長が重々しく口を開きます。
「辞令を伝えます。本日付で、マーケティング部・吉田課長を地方の関連会社へ出向とすることを決定しました」
社内がどよめく中、顔面蒼白で立ち尽くす元上司。 その姿を横目に、私はポケットの中で震えたスマホを確認しました。人事部長からのメッセージです。
「君の希望通り、在宅勤務を正式に承認する。席も元に戻したので、安心して業務にあたってほしい」
言葉は、自分に返ってくる
結局、上司は感情に任せて放った「来なくていい」という一言で、自らの立場を危うくしました。
言葉の暴力で相手を屈服させようとする人には、感情で返してはいけません。静かに、淡々と、「事実」という名のナイフを突きつける。それこそが、最も効果的な一撃になります。
彼が私に投げつけた言葉は、見事なブーメランとなって彼自身に突き刺さりました。私の小さな逆転劇は、こうして静かに幕を閉じたのです。
Feature
おすすめ記事