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映画館で「席を間違えてる」と絡まれた私。実際に勘違いしていたのはその人自身だった【短編小説】

友人と映画館に来た時のトラブルとは
私の名前は裕子。
先日、友人の亜美と、楽しみにしていた映画を観に行った時のことです。
私たちは、事前にインターネットで、一番見やすい中央の席を予約していました。
上映開始の十分前には席に着き、わくわくしながら、亜美とお喋りをしていました。
その時、私たちの席の前に、一組のカップルが立ち止まりました。
そして、男性の方が私たちに言ったのです。
『すみませんけど、そこ、俺たちの席なんで、どいてもらえます?』
寝耳に水でした。
私が「いえ、Gの10番と11番で、私たちが予約した席のはずですが…」とスマホの予約画面を見せても、彼は「こっちのチケットにも、そう書いてある」と、一歩も引きません。
彼の高圧的な態度に、周りのお客さんたちも、訝しげにこちらを見ています。
私は、恥ずかしさと、理不尽さで、顔が熱くなるのを感じました。
「おかしいですね。係の人を呼んできます」
亜美が、そう言って席を立とうとした、その瞬間でした。
女性が気づいたある事実とは
『ねえ、健司…これ…』
それまで黙っていた彼女の方が、気まずそうに、彼氏である健司さんの袖を引きました。
そして、自分たちのチケットのある部分を、指差したのです。
健司さんは、その指の先を、いぶかしげに覗き込みました。
そして、次の瞬間、彼の顔が、みるみるうちに、青ざめていくのが分かりました。
そう、彼らが、席番号と同じくらい、大きく書かれていたはずの、「スクリーン番号」を、見間違えていたのです。
ここは、7番スクリーン。彼らのチケットは、お隣の、8番スクリーンでした。
席も、列も、全て合っている。
ただ、場所だけが、根本的に間違っていたのです。
彼は、顔を真っ赤にしたまま、何も言えなくなっていました。
あれほど、自信満々に、私たちを「間違っている」と決めつけた、その張本人が、一番、初歩的な勘違いをしていたのですから。
映画の予告が鳴り響く中、二人は、小さな声で「すみません」とだけ呟くと、逃げるようにして、劇場を去っていきました。
あまりにも、滑稽な、物語の幕開けでした。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。
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