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プレゼントを「センスない」と笑う彼。→彼との思い出を全て売り、新しい人生の資金にした話【短編小説】

彼が笑ったあの時計は私のプレゼント愛した時間をセンスないで切り捨てられた瞬間短編小説

センスない…でもその時計は私の…

「うわ、見てよ菜々。こんな時計、オレなら秒で選ばないわ。センスないよな」

街のショーウィンドウに飾られた腕時計を指さし、彼氏の浩介が笑いながら言いました。
その瞬間、私の頭は真っ白になり、心臓が氷のように冷たくなっていくのを感じました。

だって、彼が「センスない」と一蹴したその腕時計は、ちょうど一年前、私が彼の誕生日にプレゼントしたものと、全く同じモデルだったのですから。

当時の私は、浩介に喜んでもらう一心で、何週間もかけてプレゼントを探しました。
彼の好みや服装を思い浮かべ、必死に悩んで、やっとの思いで選んだ一本でした。
「ありがとう、大事にするよ」その言葉を信じていたのに、彼がそれを身につけている姿をほとんど見たことがありませんでした。

その理由が、今、最悪の形で明らかになったのです。
彼は、私が贈ったことさえ、綺麗さっぱり忘れていました。

「……ねえ、浩介」

私の声は、自分でも驚くほど静かでした。
まだヘラヘラと笑っている彼をまっすぐに見つめて、私は続けます。

「でもそれ、去年の誕生日に私がプレゼントしたやつだよ」

真実に気づいた彼との未来

彼の顔から、すっと笑みが消えました。
驚き、混乱、そして焦り。彼の表情がめまぐるしく変わっていく様を、私はただ冷静に眺めていました。「え、嘘だろ…?」と情けない声でうろたえる彼に、私はもう何も言う気にはなれませんでした。

私の気持ちも、費やした時間も、彼にとっては「秒で選ばない」程度の、記憶にも残らないものだったのです。

その日、私は彼と静かに別れました。
そして、家に帰るとすぐに、彼からもらったプレゼントや、二人で買ったお揃いの品々を、一つの箱にまとめ始めました。

思い出の品を持つことは、必ずしも素敵なことではありません。
時には、それは過去に縛り付ける鎖にもなります。浩介が忘れてしまったあの時計が、私に教えてくれました。

価値がわからない人に心を尽くすのは、もうやめよう。
そして、不要な思い出は、新たな一歩を踏み出すための資金に変えてしまえばいい。
私の新しい人生は、あの時計が教えてくれた、賢い選択から始まるのです。

 

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

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