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彼にあげたネックレス。会社の同僚が「彼氏にもらった」とつけていた話【短編小説】

彼の誕生日にプレゼントしたネックレス
彼氏である悠斗の誕生日に、私は少し奮発してネックレスをプレゼントしました。
ユニセックスで使える、少し珍しいデザイン。
派手すぎず、でも芯のある彼に絶対に似合うはず。そう思って、何日も悩んで選んだ一品でした。
「ありがとう、大事にするよ」
彼はそう言って喜んでくれましたが、そのネックレスを悠斗が身につけているのを、私は一度も見たことがありませんでした。
尋ねるたびに、「大事すぎて、なくすのが怖くて」「仕事につけていくのはちょっと…」と、彼は決まって曖昧な言い訳を口にするのです。
見覚えのあるネックレスをつける同僚
そんなある日、会社の同僚たちとランチをしていた時のことでした。
隣の部署の沙織さんが、きらりと光るものを首につけているのが目に入りました。
その瞬間、心臓が掴まれたように息が止まります。
繊細なチェーンの輝き。特徴的なモチーフの形。それは、私が悠斗にあげたネックレスと、あまりにも似すぎていました。
「沙織さん、そのネックレス、素敵だね。どこの?」
平静を装い、世間話のついでという雰囲気で、私は尋ねました。
声が震えないようにするので精一杯でした。
「え、これ?先月、彼氏に誕生日プレゼントでもらったんだ!お気に入りで毎日つけてるの」
沙織さんは、幸せそうに微笑みながらペンダントトップに触れます。
先月、誕生日…。悠斗の誕生日と、ほぼ同じ時期です。まさか、という最悪の想像が頭をよぎりました。
「そうなんだ!彼氏さん、センスいいね。珍しいデザインだけど、なんていうブランド?」
「それがね…」
ネックレスの真実
彼女の口から告げられたブランド名は、私が悠斗へのプレゼントを買った、あのお店の名前と完全に一致しました。
血の気が引いていくのが分かりました。
全てのピースが、カチリとはまった音がします。
悠斗がネックレスを決して身につけなかった理由。彼の苦しすぎる言い訳の意味。
私が彼を想って選んだプレゼントを、彼はそのまま別の女性に横流ししたのです。
私の「大事」な気持ちは、彼にとってはその程度のものだった。
その事実が、ナイフのように鋭く胸に突き刺さりました。
その後のランチの味は、全くしませんでした。
会社に戻り、私は悠斗に一通だけメッセージを送りました。
『沙織さん、ネックレスすごく似合ってたよ』
返事を待たずに、私は彼のアカウントをブロックしました。
私が愛を込めて選んだネックレスは、確かに持ち主の元へ届いていました。
ただ、その相手が、私ではなかったというだけのことです。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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