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「そんなに資格取って何になるの?」と笑った同期。→人事異動の発表で、私の”新肩書き”を見たときの顔が忘れられない。【短編小説】

資格勉強する私を見下す同期
私の同期である由美は、いつも私を見下すように笑っていました。
平日の夜や休日を資格の勉強に充てる私に、彼女はコーヒー片手にこう言うのです。
「美咲って本当に真面目だよね。でも、そんなに資格取って、一体何になるの?実務で使えなきゃただの自己満足でしょ」
彼女は社内営業がうまく、要領の良さで評価されていました。
その言葉はいつも私の胸に小さな棘のように刺さりましたが、私は自分の将来のための投資だと信じて、黙々と努力を続けました。
ITパスポートから始まり、マーケティング関連の資格、そして海外の文献を読むためにTOEICの勉強も続けていました。
運命の人事異動の日
そんなある日、会社が新規事業として、海外向けのデジタルサービス部門を立ち上げるという大きな発表がありました。
社内の誰もが、花形の部署で活躍する由美が主要メンバーに選ばれるのだろうと噂していました。
彼女自身も、そのつもりでいたようです。
そして、運命の人事異動の発表日。
全社員が注目する社内掲示板に、新しい部署のメンバーが張り出されました。
私の名前なんて、あるはずがない。そう思って、自分のデスクで静かに仕事をしていました。
しかし、周りがやけにざわついています。
ふと顔を上げると、掲示板の前に立つ由美の姿が目に入りました。
彼女は、まるで時間が止まったかのように、一枚の紙を凝視して固まっています。
その肩が、小さく震えているように見えました。
気になって私も掲示板を見に行くと、そこには信じられない文字が並んでいました。
『デジタルサービス事業部 課長代理 相川 美咲』
私の名前と、新しい肩書き。
それは、私がコツコツと時間をかけて取得してきたITと語学、マーケティングの知識を全て活かせる、まさに夢のようなポジションでした。
もう一度、由美の方を見ました。
彼女はゆっくりとこちらを振り返り、私と目が合いました。
その顔は、驚きと、信じられないという戸惑い、そして嫉妬と焦りがぐちゃぐちゃに混ざり合った、今まで見たこともない表情でした。
「そんなはずがない」と、声にならない声が聞こえてくるようです。
あの瞬間、彼女の顔を私は一生忘れないでしょう。
誰に笑われようと、自分の未来を信じて続ける努力は、決して裏切らない。
地道な一歩一歩が、いつか自分を誰も見たことのない場所へ連れて行ってくれるのだと、私はこの経験を通じて確信しました。
本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
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