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私のポーチを勝手に漁り「こんなに隠して大変だねw」と言い放った女。→「あなたの毛穴よりマシですよ?」と笑顔で返した結果。【短編小説】

私のポーチを勝手に漁り「こんなに隠して大変だねw」と言い放った女
「うわぁ…これ全部、使ってるの?」
社内イベントの控室。
ちょっと席を外して戻ると、同期の紗栄(さえ)が、私のバッグを勝手に開けていた。
「あ、ごめんごめん!このポーチ、かわいくて見ちゃった。…で、すごいねこの量!」
勝手に開けたことには謝らず、まるで「発見した」かのように笑う。
アイブロウペンシル、コンシーラー、練りチーク、ミニファンデ、リップが3本。どれも必要最低限の“お直しセット”だ。
なのに彼女は、ポーチの中身を並べて、まるで「やりすぎ」みたいな扱い。
「こんなに隠して、毎日大変だねw」
と、わざとらしく笑って見せた。
自然体アピール女の”マウンティング”
紗栄は昔から「すっぴんでこれなの、逆に引かれる」だの、「毛穴の開きとか無縁」だの、ナチュラル美人アピールがすごかった。
だけど、正直私は知っている。
彼女が誰よりもこまめに美容皮膚科に通い、社内トイレで5分に一度鏡を見るタイプであることを。
“私たちの努力”を無意味にするような言葉を、平気で放つ人。
そして、マウンティングの最後に、こう言った。
「でもまあ、努力してるってすごいことだよ。私はそういうの無理だから〜」
「あなたの毛穴よりマシですよ?」
私が言い返した言葉は、ただ一言だった。
「まあ、あなたの毛穴よりマシですよ?」
笑顔で、口角を上げて。
その瞬間、彼女の顔が引きつった。
「え、なにそれ…冗談?」
「うん。冗談。紗栄の”自然体”みたいにね」
その場は静まり返ったけれど
その後、控室はちょっとした緊張感に包まれた。
でも私は後悔しなかった。
「誰かの努力を笑う人」には、ちゃんとブーメランが刺さることもあるのだと、はっきり伝えたかった。
美しさは、積み重ねでできている
私のポーチには、確かにたくさんのアイテムが入っている。
でも、それは“偽る”ためではない。
“自分に向き合う時間”を作るためだ。
誰かにどうこう言われる筋合いは、ない。
笑顔で黙ってやり過ごす時代は、終わったのかもしれない。
ちゃんと、自分を守る言葉を持つこと――それこそが、本当の美しさなのだと思う。
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