17.07.07(Fri)

【現代恋愛図鑑】vol.15 共犯者意識という恋の毒 ~ダブル不倫~

島田佳奈

島田佳奈 作家/コラムニスト/AllAbout恋愛ガイド。

豊富な体験と取材から得た“血肉データ”による独自の恋愛観が定評。 『人のオトコを奪る方法』『アラフォー独女の生きる道』他、著作多数。

既婚者の不倫は、男に限ったことではない。独身時代と同じように仕事を充実させられなかったり、夫とセックスレスになってしまった妻だって、そのはけ口を別の男に求めてしまうこともある。

夫のいる身でありながら不倫に走ってしまう女は、およそ心に不満を抱えている。当の夫とうまくいっていなかったり、平穏な日々に退屈を覚えたり、夫では満たされない「ときめき」を渇望していたり。

そんな人妻が浮気や不倫をする場合、相手も既婚者であることが一番望ましい。

既婚者にとって一番困るのは、相手がエスカレートしてしまうことだ。せっかく家庭と不倫をうまく両立させているのに、相手から「離婚して一緒になろう」などと提案されてしまったら、その時点でゲームオーバーになってしまう。その点、互いにパートナーのいる既婚者同士ならば、うっかり本気になるという事故は起こりにくい。

お互い別の家庭がありながら、こそこそと逢瀬を重ねる──ふたりの間に芽生える共犯意識は、不倫にとって格別なエッセンスとなる。

香水はつけない。いつもと違う化粧や服装はしない。確実に怪しまれない日時を設定し、アリバイを頼める友人を巻き添えにする。
パートナーにバレない小細工を重ねるたび、少しの罪悪感とスリルがふたりの中に蓄積されてゆく。

友人のC子は、夫とセックスレスに陥っていた。何度も夜の営みを拒絶され心が折れてしまった彼女は、たまたまそのことを相談した仕事仲間の妻子持ちK氏と深い関係になった。

その話をC子から聞いたとき、あたしはよくあるケースだとタカをくくっていた。だがK氏の妻に不倫がバレてしまってから、事態は意外な方向へと変化した。

K氏は妻に離婚を突き付けられ、判を押しバツイチとなった。C子のほうは夫にバレることもなく、このままK氏との婚外恋愛を楽しむつもりだった。しかし、その後まもなくC子はK氏に振られてしまった。

「スリルがなくなったら、C子のことを好きなのか、わからなくなった」
K氏からの別れの言葉は、正直で残酷なものだった。
C子は「元妻に慰謝料請求されなかっただけマシ」と別れを受け入れた。

「女心と秋の空」などというが、男心だってそう単純ではない。

K氏のC子に対する「好き」は、帰れる家があるという安心感の上に成り立っていた。スリルが興奮材料となるのは、命綱に繋がれた状態だからこそ。落ちたら死ぬような状態は、ただの恐怖だ。元妻に多額の慰謝料を支払い、財産分与で家も売却してしまったK氏は、恋を楽しむ心の余裕もなくなってしまったのだ。

共犯意識がなくなったら終わるような関係は、恋ですらなかったのかもしれない。だが正しかろうが間違っていようが、倫理に反した関係を持ってしまったら、すべてを失う覚悟が必要だ。

C子が夫にバレず、何も失わなかったのは、単にラッキーだっただけだ。だが「夫とセックスレス」という根本の問題は、未だ解決していない。

共犯者意識という毒を知ってしまった女は、再びその甘美さを求めてしまうかもしれない。