結婚情報誌といえば「ゼクシィ」だ。
彼からのプロポーズを承諾し婚約した女性の7割は、おそらくこの雑誌を手に取っていると思う。まだ結婚が決まっていなくても、未来の青写真を描いたり憧れのウェディングを妄想する材料として、ゼクシィをコンビニで買っていく女性もいる。
厚さ約5cm、重さ約4kgもするゼクシィは、女性が買って持ち帰るには重すぎる。あの雑誌の重量は、結婚の重さそのものだ。身を呈して「結婚は決して軽いものではない」と女たちに教えているのかもしれない。
対して男たちにとってのゼクシィは、重圧そのものだ。
もし、まだ結婚を考えていない彼女の部屋にあの雑誌が“さりげなく”置かれていたら、男が動揺するのは目に見えている。あの雑誌の重さが「そろそろ結婚したいな」という彼女からの無言のプレッシャーに思えてしまう。
傍らにゼクシィを置いた彼女に「結婚とか考えてる?」と詰め寄られたら、それは“最後通告”だ。もう逃げられない。そこで「考えておく」などと曖昧な回答をしようものなら、あの雑誌は彼を殴るための凶器になるかもしれない。とんだホラーだ。
一度でも読んでみたことのある女性なら知っていると思うが、ゼクシィは結婚情報誌ではない。正確には「結婚式」情報誌だ。
あなたが彼との結婚を「入籍のみ」で済ませようと考えているならば、あの雑誌を買うべきではない。たとえ付録の「ピンクの婚姻届」が欲しくても、だ。
ゼクシィを買ったが最後、およそ半分を占める結婚式場のページに目を通したならば、結婚の決まったあなたは感化されてしまうだろう。
しかし、経済的事情やら子供を授かる順番の逆転やら、どちらか一方(または双方)が再婚という事情により、結婚式を諦めなければならないケースもある。
「結婚」において、式や披露宴はマストではない。だがこの世には、結婚そのものより「結婚式」への憧れが強い女性もいる。
ゼクシィに感化され「結婚式を挙げる」ために婚活をしているA子(仮名)は、交際前の段階から相手に「結婚するならば式を挙げるか」リサーチしているという。
結婚式というものは、マストではない反面「一度しかやってはならない」決まりもない。世の中には同じ伴侶と何回も結婚式をやっているセレブだっているし、入籍のタイミングでなくても結婚式を挙げることは可能だ。
経済的事情も妊娠出産も「できない」理由にならないとしたら、やるかどうかは相手と自分の希望のみ。
A子のようにハッキリ主張するのは、夢を叶えるために正しいアクションともいえる。しかし、つき合ってもいないうちから問われたら、多くの男性は引いてしまうのではないだろうか。
結婚は現実だ。その先の結婚生活は、人生の半分以上も続く。「結婚式さえできればいい」なんて軽い気持ちで決めてしまっては、先が思いやられる。相手にも失礼だ。
だが女性は総じてリアリストだ。ゼクシィを軽く感じないくらいには、結婚の重みを理解している。
その先の結婚生活が未知数だからこそ、人生の頂点を味わえる結婚式をしたいと望む女心。多くの人にお披露目をし「安易に別れることの気まずさ」を植えつけておけば、離婚の抑止力にもなるだろう。
花嫁の白いドレスの内側には、そんなしたたかさが隠れているのかもしれない。