17.07.12(Wed)

これは映画ですか? 食肉は罪ですか?

Rieko Shibazaki

Rieko Shibazaki 編集/ライター

ファッション誌、カルチャー誌の編集を経てフリーに。映画人やデザイナーなどのインタビューを始め、ファッションからゴシップまで幅広く執筆。幼少期&学生時代をNYで過ごしたこともあり、ミュージカル&海外ドラマ好き好きな映画のジ...

『オクジャ』

 今年の第70回カンヌ国際映画祭で大きな論争を巻き起こした作品、『オクジャ』の名前は聞いたことがありますか?  議論となったのは、本作が映画でありながら劇場ではなくNetflixで公開されているから。本来映画館で公開されるものを映画と呼び、オンラインで配信されるものは映画とは言えないのでは? ということで、最終的にカンヌは来年から劇場公開する作品のみ、コンペティション部門への参加を認めるというスタンスで落ち着いた。

今作を監督したポン・ジュノ監督本人も、さまざまな取材で映画はすべて映画館の大スクリーンで観るのがいいと語っている。じゃあなぜ映画会社ではなく、オンラインで配信するNetflixとタッグを組んだのか? それは大手映画会社とだと、作品の企画内容が少しでも過激だったり、予算が合わなかったりすると色々とうるさく言われたり、簡単に企画が流れてしまったりするから。さらにアメリカの大手映画会社では通常、「ファイナルカット」という映画の最終編集権は映画会社にあり、監督の意に添わない物語が出来あがることも多々ある。ところが、Netflixは脚本からファイナルカットまで、すべてポン・ジュノ監督の思うように撮らせてくれただけではなく、莫大な制作費もポンと支払ってくれた。自分の撮りたいものが明確な監督にとって、こんなに素晴らしいサポートはないわけで、当然手を組みたくなるわけだ。そういう経緯から生まれた作品が『オクジャ』なのだが、作品内容もやはり議論を呼ぶものだった。

オクジャとは韓国の山奥で少女ミジャ(アン・ソヒョン)と暮らす巨大豚の名前。二人は姉妹のように仲良く平和に暮らしているのだけど、ある日、世界的食品企業ミランド社がオクジャを食肉品評会に出品するためアメリカのNYへと送ろうとする。ミジャも自力でオクジャを助けようすとするが、そこに過激な動物愛護団体も登場し、オクジャを巡って世界を股にかけた争いが巻き起こってしまう。この構図って……。まるで今の世界そのものではないか! 捕鯨やイルカ漁をする日本を攻撃する過激な海外団体、動物愛護を訴えて毛皮を扱うファッションブランドのコレクションにいやがらせをする団体……。それぞれの言い分があり、それぞれ文化や価値観があるのでこの問題に関しては簡単に色々と言えないけれど、今作でポン・ジュノ監督は決して「meet is murder(食肉は罪)」を訴えているわけではない。現に監督本人も豚骨ラーメンが大好物で、韓国も日本同様食肉文化だ。さらに歴史と豊かな食文化を誇るアジアの人々は各国の食文化をどうこう言ったりはしない。それよりも監督はおそらく大量消費社会の今、世界では大量殺戮というシステムが出来あがり、そのシステムに乗っかって食肉へのありがたみや動物の生命を受け継ぐといった意が人々の中から消え去っている世の中を問うているのだと思う。

そう思ったとき今作は先に述べたように、監督の才能を信じたりありがたがったりするよりも、予算と収益ばかりを気にしてできるだけ失敗を回避しようとする、システム化された映画業界の姿とかぶる気がした。でも映画界はNetflixやAmazonといった新勢力が入ったことで、議論をしながら変化のときを迎えている。そろそろ食肉や動物愛護といった

問題も、お互いにただ攻撃するのでなく対話をしながらソリューションを考えていい時期なのではないだろうか。

今作がどのようにキャストを募ったのかは分からなが、唯一分かっているのは超豪華ということ!! ティルダ・スウィントン、ジェイク・ギレンホール(怪演です!)、ポール・ダノ、リリー・コリンズといった錚々たる面子が集結しており、さらに60億円と言われるCGも見事。人と議論するもよし、自分の中で受けとめるもよし。とにかく必見です。

Netflixオリジナル映画
『オクジャ /okja』
全世界同時 オンラインストリーミング中
Netflix公式サイト