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「このワインは置いてる?」有名なワインを置いてないことに不満を漏らす客→店員が思わず首を傾けたワケ
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レジに立っていた夜
私は四十代で、近所のコンビニで夜勤のアルバイトをしています。
その日も、いつものようにレジに立っていました。
客足の落ち着いた時間帯、三十代くらいの女性が、飲み物を手にレジへやってきました。会計をしようとした、ちょうどそのときです。
「このワインは置いてる?」
有名なソムリエの名前を、当たり前のように口にします。あいにく、うちの棚にその銘柄はありません。私は正直にお答えしました。
「申し訳ございません、お取り扱いがございません」
すると女性は、心底ふしぎそうに眉を寄せたのです。
「えー?何で?あのワインは、取り揃えておかないとダメでしょ?」
そう言われましても、と胸の内でつぶやきます。
ここはごく普通のコンビニで、ワインの品ぞろえに、そこまでの期待をされても困ってしまうのが正直なところでした。
それでも顔には出さず、私は「ご要望として、承っておきます」と、努めて丁寧に受け流しました。
こだわりは、止まらない
ところが女性の話は、そこで終わりませんでした。
会計を待つでもなく、ワインへのこだわりを、堰を切ったように語りはじめたのです。
「ちゃんとこのワインを置いといてよ」
どの造り手が良いか、どの土地のものがおいしいか。銘柄の名前を挙げては、その素晴らしさを、私に向かって延々と説いていきます。
正直に申し上げれば、内心では首をかしげていました。
そんなにこだわりが強いなら、ワインの専門店に行けばいいのに、と。
ここは、あくまでコンビニなのですから。
けれど、その思いは、けっして口にはしませんでした。
私はただ相槌を打ちながら、彼女の熱弁に、静かに耳を傾け続けたのです。
「今度、いいのが入ったら教えてね」
ひとしきり語り終えると、女性はどこか満足げな表情で、そう言い残しました。
こちらを困らせている自覚は、まるでないようでした。
会計を済ませると、彼女は上機嫌のまま、軽やかに店を出ていきました。最後まで、その熱意がゆらぐことはありませんでした。
ひとり残されたレジで、私はなんとも言えない気持ちのまま立ち尽くしていました。怒っているわけでも、笑っているわけでもありません。ただ、噛み合わないまま過ぎていった数分間が、妙に胸に引っかかったのです。
コンビニのレジには、時々、こんなふうに少し不思議なお客様がやってきます。
あの熱意が、いつかぴったりの一本に出会えたなら、そんなことを思いながら、私は次のお客様を迎えたのでした。
※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
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