
俳優のマット・デイモン(Matt Damon, 46)が、中国映画『The Great Wall(原題)』に出演したことは人種を無視して主役級に白人の俳優を起用するハリウッドによる「ホワイトウォッシュ」(白人化)の一例だとする議論に反論した。
マットがチャン・イーモウ(張芸謀、65)監督による中国を舞台としたファンタジー大作にイギリス人の英雄として出演することに対しては、米ドラマ「フアン家のアメリカ開拓記」で知られる女優のコンスタンス・ウー(Constance Wu, 34)など一部から批判が寄せられている。
「白人男性だけが世界を救えるという人種差別的な神話が永続するのを止めなければ」とコンスタンスはTwitterで批判した。「私たちの英雄はマット・デイモンのような容姿ではない。マララ(・ユスフザイ)であり、(マハトマ・)ガンディーであり、(ネルソン・)マンデラだ」
ここへ来てマットは反論に転じ、この役はそもそも中国人俳優を想定していなかったと指摘した。
「ホワイトウォッシュの問題全体については僕も真剣に受け止めている」とマットはAP通信に語り、ハリウッドで広まっていた悪習を非難した。
さらに批判する前に映画を観るべきだと求めた上で、マットは次のように続けた。「これがモンスター映画であり、歴史ファンタジーであると分かれば、僕が中国人俳優から役を奪ったわけではないと分かってくれるはずだ。どんな形であれ、僕のせいで変更されてはいない」
ホワイトウォッシュの批判が報じられると、『LOVERS』などで知られるチャン監督は米Entertainment Weekly誌に声明を寄せ、マットのキャラクターは物語に不可欠であり、映画に登場する5人の英雄のうち4人は中国人俳優が演じていると主張した。
『The Great Wall』は、本来アジア系のキャラクターに白人俳優を起用することで批判を招いた最新の例にすぎない。ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)が『ドクター・ストレンジ』で原作のマーベル・コミックではチベット人導師という設定のエンシェント・ワンをケルト人魔術師として演じたことや、日本のアニメ『攻殻機動隊』のハリウッド実写版となる『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』でサイボーグ警官の草薙少佐役にスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)が起用されたことは激しい反発を招いた。
マットは『The Great Wall』に対する怒りは、物議をかもすヘッドラインで読者を惹きつけるためにオンラインメディアが必要としているものだと切って捨てた。
『The Great Wall』は12月16日の中国を皮切りに、来年2月から世界各地で順次公開される。
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