17.07.14(Fri)

【現代恋愛図鑑】vol.16 独身のフリをする男の意図とは ~ゲス不倫~

島田佳奈

島田佳奈 作家/コラムニスト/AllAbout恋愛ガイド。

豊富な体験と取材から得た“血肉データ”による独自の恋愛観が定評。 『人のオトコを奪る方法』『アラフォー独女の生きる道』他、著作多数。

一時期世間を賑わせたおかげで、すっかり浸透したキーワード「ゲス」。
本来の「下衆」という言葉は「心のいやしい人」全般を指すが、不倫の世界においては、件の彼よろしく「独身と偽って女を口説いちゃった男」という意味に解釈される。

そんなゲス男は、巷では珍しくもないほど棲息する。不倫をしたことのある女性を10名集めてみれば、うち1/3は「後から彼が既婚者だと知った」ケースにぶち当たるだろう。

どうして、ゲス男は身分を偽らなければならないのか。あたしは昔の悪友(合コンで独身だと偽ったゲス男)にその真意を尋ねてみた。

「そりゃもちろん、独身のフリしなきゃ女の子はオチないでしょ」
悪友は、悪びれず答えた。
「既婚者だってバレたら、どうなるの?」
「それでダメならゲームオーバー。でもほとんどの子は、つき合ってから知ったら『もう別れられない』って言うぜ」

確信犯。ゲスな男はどこまでもゲスなんだ、とあたしは呆れた。

過去、あたしは何人かの既婚者と不倫の関係になったことがあるが、相手は皆、最初から結婚していることを公言していた。独身だと偽って口説いてきた男は、ひとりもいない。

ここでふと、疑問が生じる。

結婚指輪をしたまま堂々と女を口説く男と、結婚指輪を外し独身のフリをして女を口説く男と、どちらのほうがよりゲスなのだろうか。

友人のH美は以前、3年もの間「独身だと思い込んでいた」男とつき合っていた。その彼は独身かと思いきや、妻と別居中の既婚者だった。ただの一度も、彼の住むアパートに妻がやってきたことはなかった。正月の帰省の行き先も、妻子の待つ家ではなく彼の生家だったという。H美は彼のSNSへの投稿によってそれを見ていたので、3年間まったく疑いもしなかった。

「どこで既婚者だってわかったの?」
あたしは率直に尋ねた。
「離婚届。彼の奥さんから郵送で送られてきたのが、部屋に置きっぱなしだったの」
「彼はなんて?」
「黙っててごめん、って」

判を押して提出すれば、名実ともに独身となる。だからといって、3年もの間独身だと偽っていた事実は変わらない。

「もうすぐ独身になるから」フライングで独身のフリをするにしては、3年は長すぎる。別居の理由はわからないが、離婚に応じることになった一因は、H美との関係も少なからずあるだろう。

H美は、ショックでいったん彼とは別れたものの、のちに復縁し、その彼と結婚した。結果オーライかもしれないが、なんとなくあたしは腑に落ちなかった。

騙されてしまった女に罪はない。だが、既婚者と知ってもなお関係を続けるならば、そこからは同罪だ。

発覚のタイミングがもっと早ければ、H美も不倫の沼にハマってしまったかもしれない。逆にもっと遅ければ、知らぬ間に離婚して独身になっていた可能性もある。

たぶんあたしがモヤモヤするのは、その彼に誠意が見られないからだろう。別れた妻に対しても、3年間も平然と騙していたH美に対しても。

独身だと偽る男は、平気で嘘がつける性質(タチ)ということだ。「欲しいモノを手に入れるためなら、手段を選ばない」姑息さこそが、ゲスの極みなのかもしれない。