ファッション界以外のところでも性別についての議論が多くなされる昨今。あなたはどのような意見を持っていますか?
性差のないファッショントレンド、“ジェンダーレス”を全面に打ち出した2015-16年秋冬シーズンのGUCCIは大きな話題を呼びました。メンズのコレクションには女性、レディースのコレクションには男性を登場させ、中性的なムードが満載。
写真:style.com
GUCCIのみならず、Paul SmithやRag&Boneなどもジェンダーレスを提案しています。
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■ ジェンダーレスを表現するアイテム
腰回りにゆとりのあるスラックスタイプのパンツや、体のラインが出ないオーバーサイズのアウター。ミニバッグが一大トレンドだった前シーズンとは真逆に、秋冬はビッグサイズのマスキュリンなトートバッグも多く見られました。
バッグにトレンドの流れは少ないメンズでは、今までメインストリームではなかった小さめのバッグが比較的多く出たことも、GUCCIの影に隠れてはいるもののジェンダーレスの流れの一つといえます。
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男女平等を訴えるフェミニストの動きや、同性婚を認める都市も増えていることが“ジェンダーレス”の背景に。もはや、同性愛者という枠組みを作ること自体がタブーなのかもしれません。
■ DOLCE&GABANNAの真意とは
しかし、そんなファッション界や世の中の流れに真っ向から逆らっていったのがDOLCE&GABBANA。「Viva La Mamma」をテーマに女性らしさを全面に押し出したコレクションもさることながら、エルトン・ジョンの同性婚と体外受精に対して批判のコメントを公にし、大きな反響がありました。
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「『昔ながら』の家族のみ支持する」など、デザイナー二人の多くの発言に激怒したエルトン・ジョンは「君たちの古めかしい考え方は時代の流れに合っていない。君たちのファッションと同じだ。僕はもう2度とDOLCE&GABBANAは着ない」と反論。リッキー・マーティンやコートニー・ラブといった著名人もエルトン・ジョンを支持し、SNS上でDOLCE&GABBANAのアイテムをゴミ箱に入れる写真などを投稿して話題になりました。
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メディアで流れる情報がどこまで真実なのか定かではないため、彼らの発言の真意を探ることは難しいところ。しかし、DOLCE&GABBANAのデザイナー二人も同性愛者で元恋人同士のため、彼らの本意は同性愛者への批判ではないはず。
男女両方が存在していなければ新しい生命が生まれることはない。そして出産という行為を行えるのは、物理的に女性だけ。命を未来に繋いでいくには「男女ともに欠かすことができない」としたうえで、命がけで出産をする女性に対して、その力強さや深い愛に敬意を表する、というのが秋冬コレクションで彼らが伝えたかったことだったように感じます。
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彼らの言動に対する批判はさまざまですが、重いテーマを華やかで軽快に世の中に提唱することができるのはファッションの魅力の一つ。愛することの自由、表現の自由、発言の自由。自由を求めるということは同時に、他人の自由や批判をも認める寛容さがなければ、対立が続くだけということが、私がファッション界の“ジェンダーレス”のトレンドから学んだこと。
正解はどこにも存在せずとも、“ジェンダーレス”の流れはまだ引き続きファッション界のビッグテーマとなりそうです。
ELIE INOUE
instagram@elieinoue