16.05.17(Tue)

そもそも、ファッションショーの意味とは?

ELIE INOUE

ELIE INOUE Fashion Journalist

神戸の大学を卒業後、単身渡米。NYのファッション業界に携わり、雑誌のライター・コーディネーターとして経験を積む。現在はParisをベースにヨーロッパを駆け回りながら、海外取材やコレクションを通してトレンド分析・考察するジ...

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Photo by Kevin Techman


「ファッションショーとは何のためにあるのか?」思わず問わずにはいられなくなった、昨シーズンのファッションウィーク。そんな疑問は、キャットウォークで発表された服がすぐに購入できる“See Now, Buy Now”“In-Season”“Ready-to-buy”という実験的な取り組みが引き金となりました。他の都市に比べて商業的であるNYで始まった動きでしたが、CFDAの結論は “ブランド個々の判断に任せる”というもので、とりあえず終止符を打ったようです。(専ら、パリのブランドがこのシステムに賛同することは一切ありませんでしたが。)ビジネス面で苦しむブランドが多い中、ショーをダイレクトに売り上げに繋げたいと考えるのは自然なこと。しかしそれでは本来のファッションショーの意味はどこへ行ってしまったのやら……。


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Photo by Kevin Techman


NYの動きとは相反するように、ヨーロッパ、特にパリとミラノでは原点回帰・ラグジュアリーの再考・技巧をテーマに、見る者の心を揺さぶり、新たな活路を拓いていきました。時代を牽引する最先端のトレンドを生むスタイルではなく、限りなく今この瞬間に近い<現在>を表現することで、よりリアルに軽いステップで私たちに歩み寄ってくれたのです。欲しいと言うからすぐ提供する、ではなく“待つ価値もあるほど魅力的なもの”という強気なメッセージのようで、純粋に着たいと思わせてくれる魅力は消費者の心理に訴えかけるリアルクローズに仕上がっていました。

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(VETEMENTS)


そしてそれは否応にも訪れる世代交代の確かな波でもありました。先鞭を切ったのはVETEMENTS。続いてKoche、Y/project、AALTOが挙げられます。ストリートの感覚を取り入れたアンダーグラウンドな世界観で圧倒しつつ、細部に至るまで精妙なデザインを裏付けする技巧は納得の実力ですが、驚くべきは彼等が30代前半の若者であるという点。“ユース”が今季の一つのテーマにもなったように、彼らの情熱はビジネスに傾きすぎている業界人を、初心に帰らせるような起爆剤になったに違いありません。

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(左からKoche, Y/project, AALTO)


予測可能な枠を超えたデザイナーのプロフェッショナルな技に感動したり、コレクションが生まれるまでの背景、服に込められたメッセージを感じてこそ、本当の意味で“服”が完成する。そして服に息が吹き込まれる瞬間こそが、ファッションショーなのかもしれません。

より一層クリエイティビティが必要とされるデザイナー。そして消費者である私たちは、新しい洋服を買うことの意味を今こそ再考すべき時かもしれません。 

ELIE INOUE
instagram@elieinoue