ELIE INOUE

2015.12.03(Thu)

華やかなファッション業界の裏側。目を背けられない不都合な真実とは

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©TRUECOSTMOVIE


ファッションと環境問題、発展途上国の労働問題というのはいつの時代も議論され続けてきました。大量消費社会の現代で、ファッション市場というのはその中心核。特に、2000年に入りファストファッションが台頭したことで、消費スピードは一気に加速。過去20年、アメリカだけでも衣服の消費は400%拡大しているという結果も出ています。

より多くの資源を使用する一方で、支払う対価は低くなりますますデフレ傾向に。最もその影響を受けているのが、発展途上国の労働者たちです。社会のひずみが崩れ遂に起きてしまったのが、2013年バングラデシュ・ダッカの工場崩壊事故。死者1,127人、負傷者2,500人以上の大惨事となったビルには縫製工場、銀行、商店などが入居していました。事故前日に当該ビルの亀裂が発見され、ビルの使用を中止するように警告がされていたにも関わらず、ビルのオーナーらによって無視されバングラデシュ史上最大の産業事故に。当事件をきっかけに、劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が浮き彫りになってきたのです。

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映画監督のアンドリュー・モーガンはこの事件をきっかけにドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト』の撮影に乗り出すことに。「誰かの利益は、他の人々を搾取することによって得られるものであっては決してならない」という信念のもと、ファッション業界の真実に迫ります。

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映し出される映像は悲惨で、目を覆いたくなるようなシーンも。同じ地球上、同じ空の下にこれだけの苦しみを抱えながら生きている人がいるのだと思い知らされる現実はあまりに絶望的。
SNSの普及によって、世界はより近く国境さえ消えつつある今。リアルタイムで地球の裏側の光景が手のひらの小さな四角い窓を通して見られるにも関わらず。不都合な真実を突きつけられると「これは遠く離れた異国で起きていることだから関係ない」なんて無責任過ぎる回答は、矛盾にも程があるし滑稽過ぎるのです。
では、この絶望と犠牲を前進の一歩にするためには何をするべきなのでしょうか?

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正直、戦争とか政治とか経済とか、難しいことは私にもよく分かりません。けれどきっと、何かを“する”ことではなく何かを“しない”ことで救える命がある、というのが前進する唯一の希望の光。
映画『ザ・トゥルー・コスト』はよい道を選ぶ歴史的な好機を迎える一途となってくれることを願ってなりません。すくなくとも私は“血でできた服”など着たくもなければ、目を向けたくもない。メディアに携わる一人として、声を上げることできない者のために、声を上げていきたいと思います。

Rest In Peace to the victims of Rana Plaza.

『ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜』
2015.11.14(土)渋谷アップリンク公開

ELIE INOUE instagram@elieinoue

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