17.05.11(Thu)

パリジェンヌの多くは投票を棄権? フランス国民が選んだ“団結”の意思とは

ELIE INOUE

ELIE INOUE Fashion Journalist

神戸の大学を卒業後、単身渡米。NYのファッション業界に携わり、雑誌のライター・コーディネーターとして経験を積む。現在はParisをベースにヨーロッパを駆け回りながら、海外取材やコレクションを通してトレンド分析・考察するジ...

5月7日(現地時間)第二回投票の結果、フランス新大統領に前経済相エマニュエル・マクロン氏が当選しました。39歳最年少大統領の誕生、そしてファーストレディとの馴れ初めなども含めて日本でも話題ですが、個人的にはこの結果に安堵。

お喋り好きのフランス人は、とにかく政治についてよく語ります。誰に会っても、どんな集まりでも話題に上がり、選挙権もなければ政治に疎い私ですが、“フランス人らしいなぁ”と彼らの話を聞くのが楽しみになっている自分がいました。半ば論争ともいえるほど、本当によく話し合います。

私のフランス人の友人(20代〜30代のミレニアム世代)は、「マクロン氏を支持するというよりも、ルペン反対派という意味でマクロンに入れる」「棄権する」「白票を入れる」という声が多かったです。友人はファッション関係者やクリエイターといった自由業が多いせいもあってか、リベラル派や政治に高い関心のない若者の偏った意見かなと、投票結果前は思っていました。

結果的にはマクロン氏65%以上という圧勝で終わりましたが、棄権25%と無記名投票12.5%を超える見通しと、前例のない多さだと報道されています。この数字が浮き彫りにした国民が抱える政治への無力感に対して、「多くの有権者が示した怒りや不安、疑念といったものに真摯に向き合うことが私の責任である」と当選後の演説でマクロン氏は述べました。

Tout le monde nous disait que c'était impossible. Mais ils ne connaissaient pas la France !

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フランス第一主義を掲げ、移民排斥、EU離脱、単独通貨フラン復活と国民戦線の過激な思想や政策でアピールし続けていたルペン氏の指示基盤は、農村や重工業地帯のあるフランス南東部と北部。イスラム教への反発心や恐怖を掻き立てていたのに対し、マクロン氏は新自由主義者で、宗教・移民・EU全てにおいて“団結”が必要だと主張しています。

当選確実となった投票日の夜、ルーブル美術館にて支持者の前で祝杯をあげたマクロン氏。現地メディアによると、ルーブル美術館という場所を選んだ理由は「右でも左でもなく中立的立場であることを主張し、フランスを象徴する場所だから」という見解でした。

今年3月に開催された2017FWのLouis Vuittonのショーがルーブル美術館を会場としていたのも記憶に新しいところ。「人種や宗教を問わず世界中から人が集まり、全ての人にオープンな場所」という理由で、多文化主義を提唱する意味でルーブル美術館を選んだとアーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールは説明していました。

Photo by Jean-Paul Goude

ピンチの時こそ人間、本来の姿を表すもの。フランス人のアイデンティティは、パリ同時多発テロとシャンゼリゼ通りでの発砲テロ事件の被害者遺族たちが、テロリストに対して発した言葉が物語っています。

「あなたたちに憎しみを抱いたりはしません。憎悪に怒りで応じれば、今のあなたたちのように無知の犠牲者になるだけです。あなたたちは私が恐れを抱き、同胞に不審な気持ちを持ち、安全に生きるために自由を失うことを望んでいる。あなたたちの負けです。私はあなたたちの願い通りに憎しみを抱いたりはしません」

 長い歴史と独自の文化を築き上げ、その思想を次世代へと受け継いできたフランス国民だからこその、根の強さが感じられます。そしてフランス国民が、相次ぐテロ事件による深い悲しみを乗り越え選んだ先が“団結”だったことは喜ばしいこと。

愛や希望といった、生ぬるい言葉で上手くいくほど政治も人間の心も単純ではありません。憎しみを深めるよりも愛を育む方が難しいのも理解できます。だとしても、団結がポジティブな力を生むこと、平和的解決へと向かうことを示して欲しいと心から願うばかりです……。